「商業区防衛戦・前編」その2
「皆様お待たせしました!」
私が呼んだ心強い人達も来てくれたが、そこには目を見開く者もいた。
絶対無理だって、もう返って来ないと思っていた、ピンク色と白髪が混ざったような淡い髪色に右腕には薬物に染まって固まってしまった跡。
私は喜ぶ私の口が一気に閉じた。
「ユイ、良かったの・・・?」
私が招待したのは検問所所長のサナエちゃん、ワインレッドの髪色とサバサバとしたツンデレが特徴的な私のお母さんと言っても過言じゃない人だ。
もう一人は私の事を【主様】と呼ぶ黒髪美人のゼーナちゃん、元々は私が持つ腕部武装【トリック・バスター】とスカートに馴染む羽衣のような物を奪おうとした女の子だったけどユイさんに斬られて死ぬ直前に助けた切っ掛けで私に惚れた?らしく冒険者を辞めて私達の仲間になってくれた。
「アスカちゃん」
そんな頼もしい仲間を前に私は一人の親友に焦点が合った。物腰柔らかなお嬢様で私を唯一差別する事なく親友とも呼べる女の子だ。
ユイさんの事件で喧嘩別れみたいになった後、知らない所で薬物を撒き散らしていたらしいが、恐らく何の記憶も残っていないだろう。
「ユカリちゃん、元気?」
アスカちゃんの笑顔に私は食らいつくように抱き締めてしまった。
「・・・・おかえり!」
変わり果てたアスカちゃんはそれでも私だけを覚えてくれていた、それだけで私は謝りたいって気持ちになった。
でもそれは水のように流されてしまった。
サナエちゃんに話を聞くとユイさんが回復してくれたのだがやはり後遺症なのか救われたのか私と過ごした記憶以外何も覚えていないらしい、そして薬物を投与した身体はもう修復不可能となり片腕が犠牲となり魔力を創る肉体も全て失ったと。
「ごめんね・・・ユカリちゃん・・・私、何も覚えてなくて・・・私、ユカリちゃんと喧嘩したっけ?」
皆の雰囲気は一気にシリアスになりサナエちゃんはこんなときでさえ私を心配してくれていた。
「ううん、してないよ♪」
私はきっぱりと断言した、この感じだと多分あの時の記憶もあやふやかな。
「そっか、私ねユカリちゃんがいつの間にか冒険者になってたから力になりたくてそこのお姉さんにお願いしたら冒険者に入れてくれたんだ〜!」
アスカちゃん、その人は私と何十年も苦楽を共にしたサナエちゃんだよ?と前なら笑いながらツッコんでたけど止めた、泣いてしまいそうになるから。
「ユカリちゃん、アスカをお願い出来る?」
その後のアスカちゃんについて深く聞きたくても私は心が辛くなりそうだから止めた。
サナエちゃんの顔を見るだけで分かる、また自分を犠牲にしたんだなって。
「うん、これから宜しくね」
私は出来る限り笑顔で手を出すとアスカちゃんは健気に握手してくれた。
「やった!皆さんもどうぞよろしくお願い致します!」
アスカちゃんの健気で清楚な態度に私とサナエちゃん、ユイさんを除いて歓迎してくれた。
サナエちゃんは複雑な表情を浮かべながら私にあることを伝えた。
「もし今の仕事クビになったらアンタ達の輪の中に入れなさいよ♪」
サナエちゃんは精一杯の笑顔で握り締める拳を隠しながら私の肩を優しくウィンクしながら叩いた。
サナエちゃんはまだアスカちゃんは安定しないから病院に戻るからと挨拶だけして去って行く姿に私はごめんなさいも言えなかった。
「いつか、治るといいね」
精一杯の笑顔を見せるとサナエちゃんはありがとうと悲しそうに笑った。




