「商業区防衛戦・中編」その8
「くっくっくっ、これで少なくとも四肢の一部は―――― っ?」
大爆破を引き起こし、瀕死のノアを持ち帰り自分のモノになるように洗脳や調教を計ったシュラックだったがそこにはノアは存在しなかった。
もしかしたら消し炭にしてしまったのかとノアがいた場所まで確認しようと思った矢先・・・彼の上半身と下半身が分離した。
「は?」
突然身体が崩れて顔面は地に伏せる。理解できない状況に困惑する。
視界が真っ暗になった。
顎から下が切り離された。
脳味噌が脳漿と共に外に流れていく、何も理解できずにシュラックはいつの間にか惨殺されていた。
最後に聴いたのは彼女のようだがその声色は最早別人のそのものだった。
「調子に乗らないで」
その一言を聞くともう何も聴こえず視えぬ、ただ流れていく血と爆心する心臓の鼓動だけが鳴り響いていた。
☆★☆★ ユイ
「終わった?」
仕事が一段落してノア先輩の管轄に来て見ると屍の上でノア先輩は死体を蹴り飛ばしながら吐露する。
「ちっ気持ち悪いゴミが・・・アンタみたいな低能に負けるわけ無いでしょ」
ノア先輩の一言に私は久し振りに本当の彼女を見た懐かしさを思い出す。
いつもは上っ面はにこやかで誰にでも優しいお姉さんだけど本当は腹黒で自分の不利益が生じると素顔が出て来て全力で殺すぐらいの狂ったお嬢様。
皆からは病気で亡くなって行く宛も無い可哀想なお嬢様と見えるけど私は知っている。
この人は一番関わってはイケない狂気と崩れた倫理観の持ち主だと。
「・・・はわ!?ユイさん!?い、いらしてたんですね!?」
取り繕ったノア先輩は皮を被っていつものノア先輩に戻った。
「心配してきたけど杞憂だったわ」
私は踵を返すと背中から胸を押しつける柔らかいものを感じた。
「ありがとうございます♪」
抱きしめてくれるのは良いけど・・・
「セクハラ」
思いっきり胸を掴んでるのを指摘すると舌を出しながらごめんなさいと微笑む。
「うふふ♪ちょっと疲れましたね、一度戻りましょうか♪」
ノア先輩は私に有無を言わせず腕を組んで一緒に帰ることにした、でも私には分かる、ノア先輩の瞳には【忘れて】と訴えている。
私は他人の領域を土足で踏み込むことはしたくはない、私達の秘密は沢山あるから忘れることにした、ノア先輩なりに頑張ってる部分に免じて一緒に中央まで戻ることにした。




