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18/22

修羅場


「ふぅ…あの状況からどっちかを選んでたりしてたら、確実に刺されてたな俺」


 そう呟く俺は現在、病院のベッドで横になっている。嫌まぁ、医者からは安静にしてくださいって言われているから無闇やたらに動く事は出来ないんだけど。

 思い返すのはつい数時間前に俺の目の前で繰り広げられていたヒロイン同士の修羅場。


─────────────────────


「そう…まぁ良いわ。どうせ恭弥くんは私を選ぶもの」


「むっ!!それは聞き捨てならないですね愛華先輩!何故そう言い切れるんですか?」


「ちょっと「恭弥くん(先輩)は黙ってて!」は、はい」


 うん、女の人って怖いわ(白目) 勿論、好意を向けられるのは嬉しいが、こういう修羅場展開はお断りなんだがなぁ。

 何気なく察してたけど、もう既にどっちか1人のヒロインを選ぶなんて選択肢……無理だよなぁ。愛華や輝夜から向けられる好意は、学生間で繰り広げられる一般的な恋愛感情を大きく逸脱している。

 そんな感じで考えてると、俺の中で浮かんでくるのはゲーム本編でのNTRエンディングに出てくる9人のアヘ顔ヒロインの中心で恭弥がピースをしながらニコッと微笑んでいるイラストと共に結婚しましたという文字が出てくる、あの酷すぎる光景。


「大体愛華先輩のその貧相な身体で恭弥先輩を満足させる事が出来るんですか〜?♪♪」


「っっ!!」


 まぁ、それに関しては……ノーコメントで、と言いたいが実際問題愛華と輝夜の間には圧倒的な差がある。どこがとは言わないが。それにしても愛華さん、めちゃくちゃ怒ってらっしゃる。


「ふふ、まぁ輝夜ちゃんは一生胸の大きさで張り合ってれば良いわ。私は既に恭弥くんに()()()をあげちゃった訳だし」


「は?」


 え?輝夜ってこんな声出せるの?ってレベルのドスの効いた声が出たんだけど……にしても、愛華の初めて?全く記憶にないんだが、というか俺達出会ってまだ3日ぐらいなんだが!?


「先輩……それは本当なんですか?」


 ギョロッとこちらに眼だけを動かして聞いてきた輝夜に恐怖を覚えるも、舐めるなよ…初めてとは何の事か分からないが、俺はそんな圧に負ける男じゃない!


「先輩?」


「全く覚えがございません」


 うん、負けました⭐︎ だって仕方が無いじゃないか!!お前らも実際に見てみればすぐ分かる筈、にしても今の輝夜の姿を見れば、あの不良達も全然ビビって逃げ出すと思うんだが……まぁ、そこは触れないでおくか。


「まぁ恭弥くんも恥ずかしくて話辛いでしょうしね/// まぁ輝夜ちゃんには、まだ少し早い話だったかしら」


《ブチっ》


「もう良いです……ここで恭弥先輩には私の初めてを貰ってもらいます」


─────────────────────

 

 その後は何とか愛華を必死に説得して、初めてを貰ったなどの話は嘘だと輝夜に伝えた結果、渋々ではあるが、両者引き下がってその場は丸く収まった(?)


「でも、いつか恭弥先輩には私の初めてを貰って貰いますからね♡」


 こっそり耳打ちされた輝夜の言葉に少しゾクッと来たのはここだけの秘密だ。

 

 病室から見える窓の外はすっかり暗くなっており、何故かこの病室には俺1人しか入院してなかった為、若干1人という事に寂しさを覚えながらも、机に置いてあったスマホを手に取り開く。


「ん?……この子は」


 foutubeを開き、おすすめに出てきた動画を適当に下にスクロールしながら眺めてると、()()()()()()()()目に入ってきた。

 動画のタイトルには《IDOL FES 2023 七宮美鈴》と記載されている。

 何故見覚えがあるのか……この七宮美鈴(ななみやみすず)という人物はゲームの9人のヒロインの内の1人だからだ。

 今の日本のアイドル業界の最前線を走るアイドルグループ《LISUZU》のセンターをやっている、この美鈴という少女は恭弥や修平の一個上の高校2年生だ。

 にしても、美鈴がどんな感じで修平と知り合って仲が深まっていくかは輝夜同様全く覚えていない。

 てかそんな人気アイドルと一時的にではあるが関われるとか修平すげぇな!!流石エロゲだ…… まぁ結局恭弥に寝取られる訳なんだが。


「にしても、美鈴ってこんなビジュだっけ?」


 画面に映る美鈴の姿は真っ赤な赤色の髪をツインテールにして、目にはカラコンを入れているのか左右赤と黄で別々のオッドアイになっている。

 俺の記憶上の美鈴は、地味目な黒髪に眼鏡を掛けたまさにTHE・陰キャって感じの女の子だった筈。

 まぁ恐らくアイドル時と通常時で使い分けてるんだろうが、女性ってのは化粧や髪でここまで変わるのかと驚かされる。


「まぁ、どうせ関わる事はないんだし……良いか」


 俺はスマホの電源を切り、そのまま目を閉じる。


 


 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 見事な1級フラグ建築士の有様ですね。
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