病院(1)
◇
えー私、静井恭弥は現在病院のベットにいます。幸いそこまで深くポケットナイフは刺さっていた訳では無いらしく、1週間程度入院したら晴れて退院出来るそうです。
「えーと、愛華さん?少し離れてはくれませんかね?」
「やだ……もう一生離れないわ」
俺が目覚めてからずっと愛華の調子がこんな感じなのである。ちなみに目覚めたのは2時間前ぐらい?腕に抱き付いたまま離れない愛華を見ながら、カラオケでの出来事を思い出す。
「助けられて良かったよ」
倒れる直前に俺の口から無意識に出た言葉。うん、うん?改めて思い返してみるが、思いっきしフラグ立ててんじゃねぇーか!?────これは恐ろしい事態になってしまった。
何が愛華以外のヒロインと関わる気はない…だよバーカ!!思いっきし関わってんじゃねぇーか俺!?本当にありえない、もう死にたい。
……なんて落ち込んでる場合じゃねぇよな!はい!落ち込むの終了!やっちまったもんは仕方ない、自分のした行動には責任取らないと、まぁ今回の出来事で別に輝夜が俺に特に関わってこなければそれでよし、もし関わってきたら全力で受け止めるって感じで行こう。
うん?呆気ないって?バーカ、いつまでもいじけてる主人公なんて見ててもムカつくだけだろ?って、誰に話し掛けてんだ俺は……まぁとりあえず方針は決まった事だし、今は目の前の可愛さ全開の愛華についてだ!まるで親から離れたがらない子の様にギュッっと俺の腕を抱きしめて離さないヒロインちゃん─────あー、本当に俺と愛華が同じ生物かどうかも怪しいってぐらい可愛いなこいつ。
「……愛華、心配かけてごめんね」
「本当よ……本当に貴方は心配かけて!!私恭弥くんが死んじゃうんじゃないかって不安で!!」
あーダメだなこんなんじゃ、俺は転生してから今までこの世界を何だかんだ内心ではゲームの世界だと認識してた、だけど愛華だって輝夜だって修平だって、しっかりと自分の意思を持った1人の人間なんだ。
一度助けて関わりを持った以上、自分のした行動には責任を取らないといけない。なのに、俺は無茶して愛華を不安にさせてしまった。
勿論あの時、輝夜を助けたのは間違いだったなんて言うつもりはない。後悔なんてものも絶対にしない。
「愛華……俺は愛華が望む限り、君から離れたりするつもりは絶対にないよ。誓って言う、絶対に俺は愛華の前から急に居なくなったりしないから」
「恭弥くん……それ信じて良いの?」
あぁ、それから先を言ったらもう二度と平凡な生活には戻れなくなるぞ────そんな言葉が聞こえてきそうなものだが、俺はもう止まらない。
「あぁ、信じて良いよ」
「そう……えぇ、分かったわ。なら私は一生望む事にするわ。構わないわよね?」
誰もが見惚れるであろう笑顔を浮かべながらも、瞳では絶対に拒否する事は許さないという意思を感じた。
「勿論「恭弥先輩」ん?」
言葉を遮る様に、俺の名前を呼ぶ声が愛華の後ろから聞こえてきたので見てみると、そこには悲しそうな顔を浮かべた天音輝夜が立っていた。
「あら、随分と早い到着なのね。輝夜ちゃん」
「は、はい…愛華先輩からメッセージが来たので慌てて来ちゃいました」
どうやらいつの間にか2人はとても仲良くなっていた様である。それこそメッセージでやり取りして、名前で呼び合うぐらいには……うんうん、ヒロイン同士が仲良くなる事は良い事だ。
まぁ、とりあえず俺は輝夜とは初対面な訳だし(ゲームで貴方の身体を隅々までしっかりと拝見してますよなんて口が裂けても言える訳がない) しっかりと初対面という感じで喋らないと。
「あの時助けた子だよね。無事で本当に良かったよ、名前は愛華から教えて貰ったのかな。えと輝夜ちゃん?だっけ。わざわざ来てくれてありがとね」
「……カラオケでの事は本当に、本当にありがとうございました!!恭弥先輩がいなかったら、私…私!!」
「あぁ、全然大丈夫だよ。輝夜ちゃんを救えるのなら、ナイフの一本ぐらい腹に刺されたって問題ないさ。何はともあれ2人とも無事助かった訳だし、そんな大袈裟なやり取りも必要ないよ」
そう笑顔で言うと、何だか輝夜が目を見開き、顔を赤くさせながら、うっとりこちらを熱い視線で見つめてくるのだが、どうしたんだろう?熱でもあるのかな?なんて鈍感主人公みたいな思考にはならないね俺は。
こりゃ惚れられたかもなぁ〜なんて思いつつ、スラスラと言葉が出てくる自分自身に驚く。これも恭弥パワーなのかな?それよりも、あの不良達?はどうなったのだろうか?《prrrrrrrrr》誰だろう、こんな時に俺のスマホに誰かから電話が掛かってくる。
「もしも〜し、誰ですか?」
「久しぶりだな恭弥……話すのは3年ぶりか?」
うわぁ、恭弥パッパ来ちゃったよぉ。ゲームでも何故かちょこっと出演した恭弥パッパさん、設定などはそこまでないが、ゲームでは何か息子に都合の悪い事が起きると必ず電話を掛けてきて、持ち前の財力で揉み消してくれるお手軽有能パッパだったりする。
「あぁ、父さん久しぶり……急にどうしたの?」
「お前が倒した不良達はこちらで始末しておいた。一部不良達の父に市のお偉いさんもいたようだが、明日にはニュースでその顔を拝む事になるだろう。あぁ、安心してくれ……始末とは言っても殺してはいないぞ、ではそう言う事だ。私は忙しいので失礼する」
うん、とんでもねぇパッパだわ。恭弥パッパは基本的放任主義だが、息子がピンチな時には電話で駆け付けてくれる……何だかんだ言って息子の事を想っているのか?それとも自分の経歴に傷付く事を恐れているのかな?まぁ、とりあえず問題も全て解決した事だし、今は目の前の愛華と輝夜の相手をする事が重要だな。
感想ありがとうございます。基本返信はしませんが、全部見させて頂いてます。ゲームの主人公に関しましては、物語の主人公である恭弥くんとの差を対比させる為にあんな感じになってしまいましたが、うん。何だか擁護すらも出来ない程とんでもない主人公(笑)になってますね、まぁそこら辺は100円の中古エロゲーなんで許してください!(放棄)
後伸びないっては、いいねの数の話なんですよね。やっぱりちょっと投稿してなかった期間が空いたのでしょうがないとは思いますが、いいね数が減っていてあまり見られてなさそうだったので、伸びてないって後書きで言っちゃったんですよね。
何だか上手く言えなくて、すいません!これからも投稿は続けるので是非応援の程宜しくお願いします!




