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自分の意志とか家のこととか

「俺は納得できない」

 そう言って、自動的に推し進められそうだった婚約の話を()()()()()()った。

「え…………?」

 リルの困惑と共に沈黙がこの部屋を包んだ。

 無理もないだろう。

 リルがさっき言っていた通り、俺と彼女は幼なじみで、昔から一緒に遊んできた。そうしてくうちに、リルは(ルキ)に恋をした。リルの両親もお互いの家の利益を考えて、リルの結婚相手は《ルキ》が適していると考えた。だから、今回の縁談も上手くいくと思った。しかし、宰相家は侯爵家との間に特別な何かを感じていないし、自室で(スレイ)とも話したように、()()()がこの話を良く思ってない───あれ? ()()()()どっかで…………

「ルキ様。もし体調がよろしくなければ…………」

「…………乙女ゲーム」

 そうだ。そうだった。ここは前世妹がすごくハマっていた乙女ゲームの世界。

 オレの妹は現世(この)乙女ゲームにドはまりしていて、オレにもたくさんの話をしてくれた。オレ自身は特に興味はなかったけど、ずっと望んでいた《下の兄妹》という存在が自分に話をしてくれる。それだけで何時間も聞いていられた。別に苦痛だった訳じゃないし、むしろ嬉しかった。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

『──でねっ、この《ルキ》っていう宰相の息子がかな~り紳士でね、ルキに侯爵令嬢との婚約の話がくるんだけど、それをルキは断るの! 侯爵令嬢──リルっていうんだけど、ルキとリルは幼なじみで2人の婚約は確定だって周りの貴族たちみんなが言ってたのに、[俺は納得できない]って言って部屋を去るんだ。それがすっごいかっこいいし、痛快でいいよね! やっぱルキ好きだなぁ』

『推し…………なのか?』

『うんっ!!!』

_________________________


 そのおかげでゲームのほとんどの知識がインプットされたのだ。

 ──つまり。この世界の理を知る今の俺は最強!


「ルキ…………?」

「ハッ」

「あの…………ごめんなさい。私が予定を早めたりしたから…………ルキの十分に考える時間が少なくなってしまった」

「お止めください、お嬢様………!」

「もし。もし私との婚約にご不満があるようでしたら──」

「もう一度、しっかり考えたい。だから、あと少しだけ待っててくれないか? リル」

「…………」

「日程は追って連絡する。どうぞあちらへ」






 あの後、まっすぐ自室に帰った。本当ならすぐにでも母に今日のことを報告しなければならないのだが、とてもその気になれず、結局シュイルに任せてしまった。

 婚約のことはもちろん、思い出した前世のことも整理しなければ頭がパンクしそうだ。


 (オレ)は前世で死んだ。が、死因不明。それで、前世で妹がハマっていた乙女ゲームの世界に転生した。この世界でのオレは攻略対象の1人、宰相の息子のルキとして生きることになる。

 オレの家族構成は、父・母・兄・妹で、少し複雑だった。母はオレと兄を産んだ後、4才の時に亡くなり、その後、父は再婚し、新しい母が妹を産んだ。

 ──そういえば、今朝兄の名前を聞いて何か引っ掛かったな。なんだっけ………

「…………前世の兄さんの名前…………」

 そうか。現世の兄と前世の兄さんの名前が似ているんだ。確か前世の兄さんの名前は──《零》。


   コトッ


「あっ…………」

 シュイルが紅茶を淹れてくれていた。しかも()()()置くあたり、粋な奴だな。

(お疲れですか)

 ここ数日、ボーっとしているようにみえます、シュイルがそう思うのなら周りもそう感じているんだろう。

「ああ。昨日まで寝込んでいたというのに、今日は今までよりも重労働」

 おまけに前世の記憶が戻って脳内の整理されてない。

「そりゃ疲れるよな~」

 俺は紅茶を飲んだ。

「なあシュイル。母さまは何て言っておられた?」

(はい。自分で改めて報告しろと)

「………………」

 すると、シュイルは時計を指差し、こっちをみてきた。

「…………なんだ」

 その時計は午後5時をさしている。

「家事か?」

 シュイルの頷きを見て、ルキは新たな疲労を覚える。

「わかったよ…………」

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