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風琴ねずみと夜の電車 一  作者: 倉沢トモエ


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お伽歌劇

 お伽歌劇『青い鳥』。

 昨今各地で公演を重ね名を高めている女奇術師・淡雪天堂と、もと少女歌劇団の粒ぞろいたちが、小さなお客様たちに『青い鳥』の各場面を、奇術の趣向をたっぷりに贈るという触れ込みであった。

 当地奥羽地方仙台では初のお目見え、いずれも特別席の切符は売り切れたということ。残りの席を争うか、立ち見を選ぶかという盛況であったと。

 天、と付くその名から、当初、魔術の女王・松旭斎天勝の流れをひっそりと汲むものか、とありがたく思われた。昨年新橋で大々的に引退披露特別大興行を開始、現在も評判が評判を呼び、引退といいながらあちこちからの声がかりが止まず、なかなか出番がなくならない、子供向けの舞台も得意としているかの女王である。

 だが、そうではなかった。ほかの由緒ある系統からの偶然の一致であると。

 奇術の由緒。それがまことがどうかは知らねど、この世界、その名にあやかり、は、よくあること。

 天堂なにするものぞ。さわがしく不平を申す大奇術愛好の一群もあらわれた。現在、各地でニセ天勝たちが巡業の合間を狙い次々とあらわれているのである。 さてはそのたぐいかと怪しまれていたのだ。ここまで頭に血が上れば、よその土地での評判など知らぬ。

『二度と見られません』の惹句をかかげた天勝引退特別公演。

 当地仙台では昨年六月に行われていたのだが、おそらく奇術愛好の諸兄らは、その感動が醒めぬままに方々を警戒する心となっていたのだろう。

 しかしそんな彼らでさえも、舞台初日のそのあとは行き場のなくなった蛮勇に照れて、すっかりおとなしくなり、千穐楽の本日まで毎日客席に並んでいたという。そんな評判が電車の中で聞かれた。

「奇術師である天堂嬢のソプラノは、まるで音楽学校仕込みかと思われるようでね。その歌に続いての帽子の場面でも、息を飲んだ。天が二物を与えていたね」

 乗客の誰かがいたく感激していたのを乗務中に秀真くんは聞いたそうだ。仮に甲氏とする。

 貧しい兄妹、チルチルとミチル。

 裕福な隣家とは違い、ご馳走も贈り物もない寂しいクリスマス。

 ところがこの晩は、いつもとはちがっていた。現れた老婆に渡された魔法の帽子をかむり、飾りのダイヤモンドを回すと、人間の曇った目では見えないものが見えるようになったのだ。

 老婆を見ればいつの間にやら美しい仙女。それだけではない。ありとあらゆるものが真実の姿を見せた。

 そして仙女の娘、病の床にある彼女が、幸せになるために、と欲しがる青い鳥を探すため、兄妹は旅を始めるのだ。

「早変わりの巧みさ、まるで宙から出現したような妖精、そこからすっかり引きこまれてしまったよ」


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