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風琴ねずみと夜の電車 一  作者: 倉沢トモエ


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ラジオの栄誉

 昭和三年、当地ラジオ開局記念の番組は地元の童謡・童話の会同人の協力によるものだった。この時期は各地で児童文化の研究会にかかわる有志らがラジオ局と協力して子供番組を作ることがあったようだ。

 鈴くん、秀真くんの弁当を包む新聞紙で知るのみだが最近もそうした子供会が関わり好評の番組があるようだ。当地ゆかりの小柄な大剣豪、三尺左五平の物語が『子供のゆうべ』内で先月、今月、と回数を重ねている。

「そうねえ。あのときお兄様が朗読した『風琴ねずみ』、楽しかったじゃないの。紙芝居にしたのも喜ばれたわ。続きは書いていらっしゃらないの。

 来年はちょうど、ねずみ年よ。ここでひとつ、あってもよくてよ」

 弱ってしまった。

「あれは、芸のある若先生が読んだから、より面白くなったんだべした」

 妻は思う。暗唱が得意な夫君、カツドウの弁士にならぬかとよくからかわれたものだが、いざ舞台に上げられての秀真くんを見れば、誰もからかったことを悔やむのが常であった。どうも衆人にさらされての暗唱は不得手であった。せっかくの名文も砂を噛むような味わいと変じる。


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