61/70
面妖である
しかしつぶれた王冠一枚に鉛筆五本とは、ずいぶんと篤志家が過ぎはしまいか。
定禅寺博士の正体は鉛筆も買えぬ子供の味方なのか。
先ほど訪ねて来た黒猫の件などで伺える限りでは、義足を工夫中とは申せど、本業は医術ではなく奇術の界隈に属することは間違いなさそうだ。とにかくあの生首検分が、どう考えても奇術である。誰が首がこしらえものであることを誇って陳列するだろう。
そうした仕掛け造りを請け負う職業であるとして、ではあのメダル研究の執念はなんであるのか。
大人二人は首をかしげる。どうも面妖な人物である。
「んだけっとも、そのあたりはまた今度語って聞かせっぺ。
んでまづ、ごちそうさんでがした」
長屋に向って走っていった。方角としてはそのはずだ。
「小英雄は健在だなあ」
辻氏がつぶやいて、秀真くんもうなずき、ふたりは歩き出した。




