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秀真くんは頼れる
懐に入っていた芝居小屋のビラの裏に秀真くん宛ての手紙を書いて、通りがかった電車の車掌が顔見知りの川村氏であることを確かめて預けた。交通局職員の家族が、そうして弁当を届け合っていることをマサジは知っていた。
預けられた川村氏はたしかに秀真くんに届け、手紙を読んだ秀真くんは辻氏に相談した。
辻氏はたちまち結論を出した。
鈴といえば、たま君よりほかはない。
「たまさんの顔、覚えたからよ、次に電車さ乗って来たらわかる」
秀真くんの考えでは、そうすればそのうち何時ごろにどこから電車に乗り込んで降りるのかわかってくるだろう。そのあたりから、顔なじみとして話もできよう。通勤で電車を使っているとも本人が申されていた。
「あっつも、おれの顔知っていたんだ。車掌さん、なんて言われた。何とか話を切りだせたらいいんだけっとも」
辻氏がマサジを店に連れてゆき引き合わせる、という手順が最も話が早い、と思われたのだが、問題があった。




