酒の取り扱い
「お前のおんつぁんのな、酒、たまには隠しておげな」
「そのあたりは心配ねえ。こないだ、水で薄めておいたけっとも、わがんねかったようだ。
んだけっともよ、酒飲んで寝てくれたほうが助かるときもあるんだど」
「また馬鹿ばり語ってねえで。
帰って飯食って寝ろ」
憎たらしく舌を出すなどして。それでも親方が放った仙臺豆の袋は受け取って、五色の豆菓子を口の中へ投げ込むのだ。
「そうだ、マサジ、今日は飯どうするんだ」
秀真くんが持ち掛けた。久しぶりのマサジがなつかしいのだろうか。
「飯の心配してけるの。ありがてえ話しだなや。
んだども、俺もなかなか忙しいからよ、ついてきてけさいん」
「ありがてえ兄貴分の話でもじっくり聞いて、今日はさっさと帰れ」
夜道を子供ひとり帰すのを、親方も気にしていないではないのだ。
「んでまづ、おみょうにち」
そうなるとマサジは身軽だった。中が半分に減った豆菓子の袋を秀真に放ると、千鳥足の紳士やら、美容院で丸髷を結い直し、すまし顔のご婦人などの間をすいすいと縫ってゆく。
その後を、豆菓子をかじりながら大人の男ふたりがよたよたと追ってゆくのだから滑稽だ。
「やれやれ、マサジくんは足が速いんだっけ」
辻氏、早くもくたびれた様子。
「早く」
マサジも、今宵はなにかふたりに話したい様子。




