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荒唐無稽
「荒唐無稽……」
小さな荒唐無稽がたしかに眼前に繰り広げられた。
「荒唐無稽」
秀真くんが少々くたびれたような声を出すと辻氏、
「ところで博士」
博士、辻氏、秀真くんのほかにはもう、マネキンしか居らぬ。それを見計らって切りだしたように見えた。
「僕は今日、電車の中でとある紳士にこれを譲られたのですがね」
【Café BAKENEKO】をポケットより取り出して。
「おお、愛好家がいらっしゃった。ありがたいことです」
博士は心より喜んだ様子で、
「小さな奇術ですが、これもまた、小さなお子様たちの心に不思議の花を咲かせることができましょう」
「おかげで愉快な今宵となりました。
ところで、」
辻氏がなにを続けようとしているのか、秀真くんはまるで知らない。
「僕は楽士をしておりまして。ちょいと耳には自信があるんですよ。
このマッチ箱を譲られた紳士は僕より先に電車を降りてゆかれた」




