解説
「おや、これは失敗した」
秀真くんの顔は、余程ぽかんとしていたに違いない。
「最後に、さらなる発見をご披露するはずが、こんなところで失態を。失態と申すより、現在の限界であります」
たちまちに《拍手》が止んだ。
止んで、何が起こったか。
「ご覧ください」
博士が優雅な物腰で、身動きひとつしない見物人たちを指す。
誰も黒い帽子に黒い背広だ。
「これが、『サッポロビール』、」
博士が見物人たちの隙間を巡り、胸ポケットから一枚一枚抜いてゆく。
「こちらが、『金線サイダー』、」
メダルを抜かれると見物人は、ぴたりと動きを止める。またはそのまま倒れてゆく。
倒れると、なにか軽い音がした。
「この通り、このメダル、人形を指示のままに動かせるのです。
まだ、拍手と笑い程度です。お客様がいらっしゃらぬときのにぎやかしです。しかしながらご覧の通り、些細なことが人間らしさから離れてしまう部分がありまして。
今後研究が進めば、群舞やパレードやら、そうしたものをも、お目にかけられると信じております」
「芸事向きなのかい」
辻氏がまっとうに質問をする。
「はい。
芸、とまでは参りませんが、単純で統一された動きをご披露するほか、現在のところ、できぬようです。
ビール、サイダーの銘柄で多少差があるようですが。ご覧のとおり、拍手が拍手でなくなる程度です」




