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風琴ねずみと夜の電車 一  作者: 倉沢トモエ


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メダル

 しかしよく見ると、ただの扮装のようだった。

 声は朗々とよく響き、首回りや指先には皺ひとつないように見えるのだ。

 それより、この口上を滔々と続ける博士ばかりか四、五人いる観客たちまで、時が経つにつれ妙な感じがした。

 みな、実によく笑うのである。

「そこで、わたくしが近頃工夫中の発見がこちらでございます」

 上に引っかけた白衣のポケットから一枚、取り出されたものをみとめ、秀真くん思わず声が出る。

「メダルだ」

 ときどき、子供たちが往来の真ん中で腹這いになっている姿を見ることがあろう。

 あれは、市内電車の線路に耳をつけ電車の接近するその時を計るという、危険な線路遊びである。

 線路遊びはそれだけではない。ビールやサイダーの王冠を線路の上に並べる。

 来たぞ、と起き上がり、安全な場所へ駆け出す。

 並んだ王冠の上を、市内電車が通過する。メダルがそうして完成する。

 ほかにも、釘を何度も轢かせて手裏剣としたりする。はなはだしきは、体操の先生の徒競走のピストルから盗み取った火薬を線路に置く。危険をかえりみない者がいるものだ。そんなことで調子に乗るうち、下駄の歯を線路に引っかけなどしたら、どうなるか。

 見つかれば当然叱られる。線路に異物は禁物だ。秀真くんも何度大声を出したか。

 叱られる、とはいえ、彼らにしてみればぐんぐんと駆け足で遠くなってゆく、その背中で聞くのみであるが。

 博士の口上は続く。


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