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午前三時
「こちらに師匠のご希望についてありますので、どうかよくお取り計らいくださいませね。
ああ、なんだか明日に発つなんて。お名残り惜しいわ」
「あっという間だったわね」
「まったくよ。怪我する子もいなくて良かったわ。
ではこの件、面倒ですけど、重ねて申しますが奇術は秘密が肝心ですから」
たま君は封筒を受け取り中をあらためた。
《午前三時》
中に入っていた便箋には、それきりなにも書いてはいなかった。
「やっぱり秘密が多すぎだわ」
黒猫がにやり、と笑った。
「あなたも相当破れかぶれよね。何でも屋さん」
「仕送りしなけりゃいけないんですもの」
たま君は澄ましている。
「それにしても、あれに見えるは……
あら、そうだわ。もう一か所、ご挨拶に行かなくちゃ」
窓の外を見て黒猫がまた、ソファーに飛び込んで姿を消したので、たま君、
「あらまあ」
あきれた声が出たのである。




