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結婚したくない領主の奮闘記  作者: 奈良づくし
8/17

面倒ごとは嫌い

返事は「否!!」

規定紙にでかでかと書いて封筒に仕込む。

封蝋をぺったり付けて~はい、完成。


俺が何したって言うんだ……。悪い事なんてしてないだろう……。

すんげぇ気が重い……。はぁ……。


「旦那様。既にため息を17回されています。」


「数えなくていいし、覚えなくていい。」


「畏まりました。」


「はぁ……。応接間で居るんだったな。」


「旦那様がご足労せずとも、私がお渡しいたします。」


「いや、俺が行く。なんか、すり替えられると嫌だし……。」


「そのような詐称行為などいたしません。旦那様を裏切る行為など、私には出来かねます。」


「エリーじゃない。他の奴だ。特にカメ。」


「カメ様ですか?そのような事は無いと思いますが?」


「エリー。そのままの君で居てくれ。人間はな、心が汚いんだよ。」


「申し訳ありません、旦那様。私には理解出来かねます。」


「それでいい……。開けてくれ。」


「はい。」


エリーがノックをして中の返事を待つ。

問題無く扉が開かれる。

そこそこの調度品と寛ぐことが出来るスペースで、来客の対応は基本この部屋だ。

室内には姿勢正しく座っている人影が一つ。


「ご足労痛み入る。返事を持ってきたので、どうかそちらの主へ渡して欲しい。」


「畏まりました。レイモンド・リグ伯爵様。私のような一介の者にも快く歓待して下さり、感謝申し上げます。」


「いや、当然のことをしたまでだ。そうそう、エリー。」


「はい。騎士様、こちらをお受け取り下さい。」


エリーが銀のトレーに載せて差し出したのは、1つの袋と3本のワイン。

袋には労うための金貨が何枚か入ってる。

ワインは道楽ワイン。

意味は「これやるから、大人しくしててくれ。」と王弟殿下向けのサイン。


「では、お言葉に甘えて。」


「ワインの1本は必ず主に届けてくれ。残りは好きにしたらいい。」


「いえ、全て主へお届けいたします。」


「まぁ、そこは任せる。今日は泊っていくか?」


「いえ、直ぐに返事を受け取ってこいと、厳命されております。伯爵さまの御申し出は有難いのですが、申し訳ありません。」


「そうか。帰り道中も気を付けてくれ。」


「はい。では、これにて。」


「送ろう。エリー、案内してやれ。」


「畏まりました。では、騎士様。こちらへ。」


「頼もう。」


エリーに騎士を案内させて、俺は自室へと戻る。やる事山積みなんだよ……。

折角さ、残り4年の減税処置貰ってるんだから、色々やりたいじゃん。

領地の発展もそうだけど……、魔物被害も無くなるようにしたいしさ。

とりあえず、自室にいるリッドを何とかしないとな。うざい。


「旦那様、無事騎士様をお送りいたしました。」


「ご苦労さん。エリーも何か欲しいものあるか?」


「御座いません。」


「たまにはなんか欲しいって言えよ。」


「いえ、私に必要なものは既に御座います。」


「またそれか……。」


エリーにとって必要なもの。俺という主人。ただそれだけ。

カメなら、休暇とか金とかワインとか……遠慮なしに強請ってくるぞ?


「なぁ、エリー。」


「はい、旦那様。」


「とりあえずさ、休みとかどうよ?」


「必要御座いません。それに、旦那様のお目付け役が必要になります。」


「そんなもん、カメにやらせればいいだろう?」


「カメ様でしたら、旦那様の無理、無茶を止められません。それに、買収される可能性が御座います。」


「(バレとる。)…………じゃあ、金。何か買い物とかしたらどうだ?」


「旦那様からの贈り物で十分に御座います。それに、これ以上の御厚意は心苦しく思いますので、お止めいただければ幸いです。」


「それは無理だ、日頃の感謝の意味もあるのだからな。他…………何かあるか?」


「何も御座いません。もし、もしあるとするならば、どうか旦那様のお側にてお仕えささせて下さい。」


「はぁ……。わかった。欲しい物とか、なんかあったら教えろ。」


「畏まりました。ご配慮感謝いたします。」


自室の扉をエリーが開ける。

その先には燃え尽きたリッドが俺の机にもたれかかっていた。

素直に思うけど、気持ち悪いな……。


「おい、起きろ。」


足を軽く蹴ってみるが反応なし。なんだ、こいつ。

待てよ……こいつに擦り付けるか?

正確には何があるが、女が絡まなければまともだし。顔は良い方だ。

子爵位だが、そこまで落ちぶれてもいない。むしろ領は明るい方だし。


「おい、リッド。お前がマリエール嬢とお見合いしてみるか?」


「いいの!?」


いきなり起き上がったかと思ったら、足に抱き着いてくんなよ。


「ああ……。俺は断りの連絡を送ったし、こういう話が来るって事は向こうも捜してるんだろ?だったら、俺が王弟殿下に聞いてみるけど……「頼む!!」……分かった分かった。」


こいつ……マジでメンドクセェ。

椅子に座って規定紙を取り出す。

こういう面倒なのは直ぐに行動した方が良い。


「今更聞くけど、マリエール嬢ってそんなに良いのか?」


「え!?知らねぇのか?知ってるはずだろ?」


「え?知らない。」


「はぁ!?おま、レイだって15歳の成人パーティー出てたろ?」


「ああ。行かなきゃ家督継げなかったしな。」


「そこにいたんだぜ!?マリエール嬢も!!」


「知らん。興味なかったからな。挨拶して飯食って酒飲んだらバルコニーでひたすら空気になってたし。」


「いやいや、あんな美人見ない方がおかしいんだけど!?」


「ふ~ん、そうなの?」


「そうだよ!?って、美人ってだけじゃねぇぞ?優しさ溢れる御方だ。粗相をした令嬢に気遣って手を貸したりもしたんだ。」


「ふ~ん。エリー、これ。明日で良いから速達で。」


「畏まりました。何かお付け致しますか?」


「う~ん。ワインは持たせたしな……。アレにしとくか。」


「よろしいのですか?」


「持っててもいらないしな。王弟殿下なら上手い使い道があるだろ。」


「畏まりました。手配いたします。」


「おう。あと、茶貰える?」


「はい。直ぐにご用意いたします。少々お待ちください。」


エリーは一礼の動作をした後、全身が淡く光った後、一瞬で消える。

リッドの表情が面白れぇ。なんだ、その顔。


「初めて見たのか、消えるのは?」


「え?消え……え?」


「エリー曰く、空間転移だと。目的地に直ぐに行けるってんで重宝してるんだと。」


「くうかん?」


「良く分からんだろ?まあ、そんなに難しく考えなくていいよ。」


「お、おう。」


「そんでまぁ、そのマリエール嬢ってのは人気があるってことで良いのか?」


「あ、ああ。中央じゃ話す事も難しいって話だぞ?お茶会は定期的にしてるらしいけど。」


「ほ~ん。」


「興味なさすぎだろ……。」


「興味ねぇもん。」


「……レイ、お前って本当に男か?」


「喧嘩売ってるのか?」


「こう聞きたくもなるだろ!?」


「知るか。お、もう帰ってきたか。」


「はい、ただいま戻りました。お待たせしてしまい申し訳ありません。」


いつの間にか帰ってきていたエリーに、リッドがビビりまくってる。

淹れたての紅茶を飲みながら友人の顔を眺める。馬鹿面だなぁ……。

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