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結婚したくない領主の奮闘記  作者: 奈良づくし
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至れり尽くせり?

「フッ!!」


鉄剣を全力で振るう。

上段から下段へと、下段から上段へ。

右から左へ、左から右へと。

特に振るう回数を決めていない。気の済むまで振るうだけだ。


「シッ!!」


昨日の出来事を思い出して力んでしまう。

剣圧で地面が抉れてしまった……。

やっべ……、庭師のニノに怒られちまう……。

振るうのを止め、足で抉れた箇所を慣らしていく。

全然直らない……、どうしよ……。


「旦那様、少しだけお下がりください。」


「エリー。良い所に来た。」


俺は少し下がって様子を窺う。

エリーが手をかざすと淡く光る。

そのまま手を少し動かすと、みるみる抉れた地面が直っていく。


「助かった。」


「お褒めにあずかり、光栄に御座います。こちらをお渡しに伺いました。」


エリーから手渡さたタオルで汗を拭く。

少し湿っていて気持ちいい。

火照った体には丁度良い塩梅だ。


「はぁ~。何か用か?」


「はい。旦那様の御友人であられるグリッド伯爵子息様がお見えになりました。客間でお寛ぎになってもらっています。」


「……え~?」


「如何なされましたか?」


「また愚痴かよ……。今度は何だ?何か聞いてないか?」


「特には仰せつかっておりません。」


「様子はどうだった?」


「はい。少々気落ちしておられる様子でした。」


「クッソ……。絶対面倒な奴だ……。」


「お湯浴みの準備が出来ております。お入りになられますか?」


「ああ。はぁ……、あいつの話はねちねちしてて嫌になるんだがな……。」


首にタオルを掛け、鉄剣を鞘に納める。

エリーの差し出された手に鉄剣を預ける。

鉄剣が光ったかと思ったら、納屋の方へと浮かんでいく。

いつ見ても面白い。勝手に飛んでいくんだぜ?いや、エリーが操ってんだろうけど。


「旦那様、どうぞ。」


「おう。冷えてて美味い。」


「重畳で御座います。」


「背中を流してくれるか?」


「畏まりました。」


エリーを先導にして風呂場へと歩く。

……もう少し布の生地を薄くして……いやいや、他の奴に見せたくない。

やっぱり、良い尻だよなぁ……。見てるだけで満足。


「こう……なんていうかなぁ……。」


「旦那様?如何されましたか?」


エリーが少し横に逸れ、立ち止まった。

俺の顔を窺ってくる。

やべっ、声に出てしまったか?


「何でも無い。何でも無いぞ?ほら、風呂場に行こう。」


「?畏まりました。」


小首を傾げるエリー。再び前を歩くエリー。可愛い。

う~ん、欲望には逆らえんな。俺も男ってことか。

……どうすれば俺だけが尻を鑑賞できるのか……。

服……メイド服を改造……。駄目だ。全員見ちまう。

いっその事、頼み込むか……。いやいや、嫌われたくない。

命令は……したくない。これだけは、「命令ですか?」って言わせたくない。言われたくない。

腕を組んでうんうん唸りながら歩いていると声がかかる。


「旦那様、お着せを戴きます。」


「おう。」


汗の滲みこんだシャツやズボン、パンツとエリーに渡して裸になる。

昔っから、エリーには風呂場でも面倒を見てもらってるから、慣れたもんだ。

風呂場の中に入って、備え付けの木椅子に座る。


「お湯を掛けます。熱ければ仰って下さい。」


お湯を掛けてもらうが全く熱くない。ちょうどいい温度だ。

俺が何も言わなければそのまま続けられる。いつもの事だ。

俺の頭を柔らかい手が軽く掻いてくれる。

エリーは自動人形。人形と言ってるがその実、ほぼ人間だ。

頬を引っ張れば伸びるし。髪も伸びるし。

飯を食わなくても生きられるのがそれっぽいけど……。ほぼ、人間と変わらない。

変わらないってことは……ムフフな事も出来る……のか?知らんけど。


「なぁ、エリー。」


「はい。お湯加減はよろしいですか?」


「ああ。……聞きたいことが有るんだが……。」


「何なりと申し付け下さい。あ、頭を洗いますね。」


「おう。……あのさ。」


「旦那様。今お喋りになられますと、泡がお口へと入ってしまいますのでお気を付けください。」


「おう。」


わしわしと俺の髪を洗う音だけが風呂場で響く。

メッチャ気持ちいい。

普段の疲れが吹っ飛ぶぜ……。


「痒いところは御座いませんか?」


「無い。流してくれ。」


「畏まりました。お掛けいたします。」


お湯を頭へと流され、泡も一緒に落ちていく。

ええ気持ちじゃ~。さっぱりするなぁ~。


「身体をお洗い致します。立たれますか?」


「そうする。今日は強めでもいいぞ?」


「畏まりました。」


木椅子から立ち上がって待つ。

ごしごしと何かを擦る音がした後、首筋から洗われる。

力加減がね、本当に丁度良いんだよ……。昔っからそうなんだよ。

背中を上から下へ、正面に回って上から下へ。

あ~、ええ気持ちじゃ~。

エリーが全部洗い終わったのか、首筋からお湯を掛けられる。

というか、エリーがお湯を操ってる。

少ない量で効率的に泡を落とすからな。本当に便利。


「お座りください。最後にお顔を洗いますね。」


「おう。」


目を閉じて待ってると、何かを塗られて広げる様に洗われる。

エリーの柔らかい指が何とも言えない。人形じゃ無いよ、人だよ。

本人に行っても、きっぱりと反論されるからさ。あんまり言わなくなったけど。


「なぁ、エリー?」


「はい。如何されました?」


「お前の指、最高だよ。」


「お褒めにあずかり、光栄に御座います。お湯をお掛けしますね。」


「おう。」


またお湯で軽く流される。ほっほ、ええ気分じゃ。


「お疲れ様です、旦那様。お浸かりになられますか?」


「そうする。なぁ、エリー。」


「一緒に入るなど恐れ多くできませぬ事、先にお詫び申し上げます。外でお待ちしておりますので、ご入用の際はお声掛け下さい。失礼いたします。」


最近だとこうだ……。いつからだろうか……。

小さい頃は一緒に入ってくれたのになぁ……。

命令で嫌々入ってもらいたくないしなぁ……。

嫌になったのかなぁ……。

昔みたいに一緒に入りたいな~。俺がエリーの髪を洗いたい……。

……聞くしかないか~。なんて聞こうかな……。

まぁ、今は、ゆっくり浸かるか。風呂最高、気持ちええ~。

何か忘れてるな……なんだっけ?

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