1、退学処分
慣れてないので誤字があったら遠慮なくお願いします。
「ジル・ヴィオローネ、貴公は学業の向上の見込みがないため本日で退学処分とする」
その一言は俺にとって死刑宣告と同じような一言だった。
「せ、先生!考え直してください!今寮を出ていけと言われても僕はどこにも、、、」
必死の形相で懇願する僕。しかしそんな僕をまるで獣を見るような目で一瞥して、めんどくさそうに先生は言った。
「それなら言わせてもらうがジル、お前はこの学校に入学して一年が経ったが全属性適性があるにもかかわらずまだ最弱のE級魔法しか使えないではないか」
全属性適性とはこの世界を司るという七つの属性、火、水、風、雷、木、土、氷全てのの適性があるということだ。全属性適性がある人は全世界の国の首都の数より少ないと言われ、とても重宝される。本来ならば。
「でも僕は魔法の融合が、魔法を融合することができます!なのでどうか退学だけは、、、」
そう、僕は他の学生ができないこと、すなわち魔法の融合ができる。
しかし先生はさらに追撃の手を緩めずーー
「魔法の融合がなんだというのか。そんな児戯がなんの役に立つと思っている。お前のような無能はこの学校には必要ないんだ」
お前のような無能。その一言が俺の心を縛りつけた。俺だって無能、役立たず、と罵られながらも頑張っている。魔導書だって買えないけれど友達に見せてもらって勉強している。それなりの努力はしてきたはずだ。
「お前の退学処分は職員会議で決定したことなんだ。もうそれは覆せない。今月中に寮も引き払って我が校から出て行け!」
○△□◇
「ということがあったわけだよ」
「いやお前寮を追い出された後に帰れる場所があるのか?」
俺の親友ーーエリックに事の一部始終を話すと彼は呆然とした様子で言った。
僕の家は代々貴族の家だったのだが祖父の代である面白くない不始末をしてしまい、今はすっかり落ちぶれてしまっている。
その上父上は僕が小さい頃に病死、母上は十数年前に失踪していて、両親がいない状態なので僕たち兄妹はスラム育ちだ。
「いやー、それがあればいいんだけどなぁ」
「ってことはないんだな?」
「うん。不覚にも。この天才、ジル・ヴィオローネ様にも不可能はあるんだよ」
「でもお前のとこ小さい妹いるんだろ?行くとこなかったらこっそり俺の部屋に住んでもいいぞ」
「いや、それはやめておいたほうがいいよ。学園長にばれたらお前までここにいられなくなるぞ」
「お心遣い感謝いたします」
「もっと言いなさい」
僕がボケを入れるとエリックは真面目な表情で
「冗談はさておき、お前本当にやばいんじゃねえか?どうするんだ?」
「どこか別の学園に入れるように頑張るよ」
「金に困ったら遠慮なく言ってくれ。少しだけなら出せる」
「じゃあこの駅前で噴水とプール付きで16LDKの豪邸の購入手続き書にサインを、、、」
「冗談だよな!?」
○△□◇
僕にとって一番辛いのは魔法を学べなくなることではない。妹にこのことを伝えることだ。いつもなら飛ぶように家に帰るものが今日は足取りが重い。
出来ることなら今日は家に帰りたくないが僕が帰らないと妹を心配させてしまうだろう。それだけは嫌だ。
「暫くぶりだけど魔法の練習でもするか」
気がつくと俺は草原に出ていた。
ついさっきまで通っていた魔法学園に入学するために魔法の練習をしていた場所だ。
でもこんな思い出の場所も今では、僕はもうあの学校の生徒じゃないんだ、という現実を思い出させるだけだった。あの先生の勝ち誇ったような丸々と太った顔を思い出すに連れてだんだん腹が立ってくる。ストレス発散も兼ねて全力で魔法をぶっ放す。
「『火球』!えっ!?」
僕は打った『火球』はもちろんE級だ。本来なら対して威力はない。本来ならばそうなのだがーー
俺が撃ったのはとてもE級魔法の火球と言える代物ではなかった。
むしろB級の『エクスプロージョン』にも見劣りしない威力だ。
なんで?
う〜ん?
あっ!まさかっ!僕は魔法の融合は二つまでだと勝手に思いこんでいたけど、まさかいくつでもほぼ無限大に融合することができるのかっ!?
「これならっ!この力を使えば別の学校にも入学できるかもしれない」
そんな一筋の光が差し込んできた気がした瞬間だった。
○△□◇
「あー!お兄ちゃんお帰りー。どうしたのー?四回ぐらい死んだような顔が死んでるよ」
家に帰った僕を妹が満面の笑顔で出迎えてくれる。
「実は今日はエリナに言わなきゃならない大切な知らせがあるんだ」
「えー?なになにー?」
「実は俺、学校を退学になった」
それを聞いた瞬間、我が妹エリナの顔が強張った。
「えー。どうして?お兄ちゃんは優秀な生徒じゃなかったの?」
「ああ、お兄ちゃんは優秀だけど、多分あの学園長に嫌われていたんだろう。何しろ俺たちは没落貴族の子供だからな」
「ってことはもうこの寮にはいられなくなるんだよね?お兄ちゃん、どうする?」
「安心してくれ。一ヶ月以内に別の学校に合格してそっちに移るよ。お兄ちゃんは優秀だからね。エリナは何も心配しなくていいよ」
俺はエリナを心配させないために自分が「優秀な生徒」であると嘘をついている。愛する妹のためだ、神様も許してくれるだろう。
「って言ってもこの大陸で寮がある学校はあと王立アドミラルウェーク魔法学園しかないよ?大丈夫なの?お兄ちゃん入れる?」
「ああ、優秀なお兄ちゃんなら大丈夫だ。安心してくれ。約束するよ」
「それならいいのだけど、、、」
・・・・・やべっ。流れに任せてとんでもない出まかせを言っちまった。いくらアドミラルウェーク魔法学園は実技だけで編入できるといっても僕にはまだまだ実力不足だ。こりゃ明日から猛訓練だな。
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