七話 私もしかして……?
私の名前はサラ・ヘスター。今はただのサラだけどね…。
私は子供が大好き!子供と触れ合える仕事がしたい。でも、そんな仕事はそれこそ家庭教師くらいしかない。
家庭教師を呼べるのは貴族とお金がある商人の家くらいだわ。
彼らが私程度の魔法使いを雇うことはないだろう。もっと実力があって経験もある家庭教師はごまんといる。
じゃあ他に子供と触れ合う仕事がないのかというと実はそうではない。ただ、私にできないものばかりなの…。
一つは貴族のメイド。メイドは家事ができないとだめなのだけど私はできないのよ。な、なによ悪い?これでも貴族だったのよ!できるわけじゃないじゃない!
家事ができる貴族の娘もいるわ。そういう娘は自分よりも上の爵位のところで働きお手付きになるのを狙っているわ。
もっとも見た目だけのメイドも一応いるわ。そういうのは子供に触れ合いないし、夜伽をしなければならないことが多い。しかも、子供が生まれたら捨てられることになるだけだわ。まぁ、こんなのは論外なのですけどね。
もう一つは孤児院のシスター。これは貴族の娘ではなれないわ。そもそも教会はなるべく貴族の血縁者は採らないようにしているの。庶子とかではない限りね…。
そう思って諦めていたのだけど尊敬する先輩たちから家庭教師をしないかと言われて…喜んで引き受けたわ。
ヘリオス先輩は私にとって初めてこの人となら結婚したいなーって思った男性だ。でも、ヘリオス先輩の隣にはいつもセレーネ先輩がいた。敵わないなと思った。だってセレーネ先輩は私にも優しくしてくれて相談にも乗ってくれたり―とにかく優しくそして私の憧れの女性だったから―この人ならヘリオス先輩に相応しいと思った。
私が担当するのはフェイ君という男の子みたい。お母さんは…セレーネさんではないらしい。驚いた。まさかセレーネさん以外にも妻がいたなんて…。もしかして私にもチャンスがある?
少しドキドキした気持ちで屋敷に向かうと男の子とギルドの受付嬢だったエトワールさんが向かい入れてくれた。まさか……。男の子は優しい顔立ちで髪の毛は黒だった。珍しい黒髪なんて…でもエトワールさんもヘリオス先輩も黒じゃないのにどうして?気になって聞いてみたら先祖がえりみたい。
私は家に帰る途中で今日のことを思い出していた。ヘリオス先輩はセレーネ先輩とエトワールさんの他にステラさんという人も奥さんにしていた。
だから私にもチャンスがあるかもって思っていたけど彼らの仲の良さを見ると私じゃ輪に入れないなと思ってしまった。
◇
フェイ君は不思議な子だ。頭は良くも悪くもなく普通なのにときとぎ核心をついてくる質問してくる。その上5歳にしてはやけに落ち着いている。
一つだけフェイくんが歳相応の反応をするのが魔法だ。
魔法の話をするときは目をキラキラと輝かせ話を聞いている。その様子を見るとついつい頬が緩んでしまう。
それだからか。フェイ君が魔力を見つけたときの様子があまりにも可愛くて思わず抱き締めてしまった。
するとすぐにフェイ君は気を失ってしまった。
ああっ、わ、私なんてことを!!!
私は急いでヘリオス先輩たちに事の詳細を全て話した。
薬師の人に見てもらうとただ気絶しただけのようだ。
私はひたすら謝りまくった。
ヘリオス先輩とエトワールさんは大丈夫だからと励ましてくれたけど私の罪悪感は消えなかった。
折角信頼してくれて子供を任せてもらったのに…私が落ち込んでいると。
ヘリオス先輩たちは見かねたのか「そんなに心配なら一日一緒にいてあげたら?」と言ってくれた。
フェイ君はお風呂に入るとき何を遠慮してかあまり近づいてくれなかった。
その後ベッドで一緒に寝たのだけど朝起きたときにフェイ君の寝顔見たらとても可愛らしかった。
だからこそ気絶させてしまったことが申し訳なく感じる。
でも、フェイ君も気にしないでと言っていたし大人がうじうじするのはカッコ悪いわよね。
◇
今日は冒険者の依頼を受けている。アルゾフの森に生えている薬草を採ってくるものだ。何もなければ家庭教師の仕事に間に合うはずだ。
森を進むと幼女が鹿の魔物に襲われているのが目に入る。
「ウォーターランス」
水の槍が魔物に的中し、魔物は断末魔をあげて倒れる。
「もう大丈夫だよ」
幼女の近くに行き、しゃがんで話しかける。
「………」
幼女はまだ何かに警戒をしている様子だ。
まだ何かあるのかしら―そう考えていると不意に殺気を感じ私は咄嗟にアースウォールを発動した。シュッと何かが刺さる音が聞こえる。
「お見事」
パチパチと手を叩きながら全身を黒いローブで覆った男がこちらに歩いてくる。
「あなた何者?」
「私?私は…」
暗殺者ですよ、そう言って襲いかかってきた。
男が撃ってくる魔法に対しこちらも対抗して魔法を撃つ。
しばらく撃ち合うと男が話しかけてきた。
「その子を置いていけばあなたのことは見逃しますよ」
男は幼女を指差してそう述べる。
「何が目的か分からないけど。置いていけるわけないじゃない!」
「仕方がない…任務の邪魔なら殺すしかない」
男は幼女が目的だったらしい。またしても魔法の応酬が始まる。
だが先ほど違い防戦一方となっている。魔法を撃ちながらナイフも混ぜた攻撃してくるからだ。
次第に男の魔法に対処できなくなり身体に傷を負い始める。
魔法を打ち続けたせいか魔力はもうない。そして、身体に力が入らなくなる。
あと一発魔法を撃たれたら私はここで死ぬ。そう思った。
だが、そうはならなかった。男が突然木に取り込まれたのだ。
なぜ取り込まれたのか私はそれが分からないまま意識が途切れる。
意識が途切れる直前、私は妙齢の女性形をした何かが確かにそこにいるの感じた。
気がつくと私の目の前にフェイ君が泣きそうな顔でこちらを見ている。
あの幼女と私は屋敷の前で倒れていたらしい。よかったあの子は助けられたのね。
それにしても身体がだるい。
そう思いながらも話を聞くと私は怪我がひどく魔力欠乏症らしい。
さすがに私も魔法使いの端くれそれがどれだけヤバいものか理解している。
私、やっぱり死ぬのか。朦朧とした頭でそう考える。
するとフェイ君が何か話しかけてくる。
「先生、僕はまだ諦めていません。だから今からすることを受け入れてくれませんか?」
フェイ君は手を掴んでくる。
何をするつもりなんだろう?
しばらくすると何かが身体の中に入ってきて思わずピクッと反応してしまった。
よく見ると魔力だと分かる。しかも繋いだ手から魔力が流れてきている。
えっ?どうしてフェイ君から魔力が。魔力は人に渡すことはできないはずだ。なぜと頭が混乱していると。
「先生ごめんなさい!先に謝っておきます。でも治療に必要なことなんです」
フェイ君は私の身体の上に跨がりキスをしてきた。
えっ、なっ、えっ、なっ、えぇー!!!
キ、キスしてるフェイ君と?はわわ!??
私は思いっきり固まってしまった。
それでもフェイ君はキスを続ける。
すると身体が火照るのを感じた。まさか私…?
私はなんとかして顔をずらしてキスを止めようと考えるが顔をがっちり掴まれているのでそれもできない。なら目で訴えようとするがフェイ君は何かに集中するように目を瞑っている。
どうにかしようとする私の頭とは反対に身体はフェイ君を受け入れ始める。それに力が湧いてくるような感覚がする。
どのくらい時間がたったが分からないがフェイ君は唇を離した。
「先生、もう大丈夫ですか?…先生?」
「えぇ、だ、大丈夫よ…」
フェイ君が話しかけてきたのでとりあえず返事を返した。
でも、恥ずかしくて目を合わせられなかった。
「ひゃん」
フェイ君がいきなり抱きついて来たので声をあげてしまった。
「ご、ごめんなさい。力が入らなくて…」
フェイ君は謝ってきたので。
「う、うん良いのよ。気にしないで」
なんとか返事した。フェイ君は疲れたようですぐに私の隣で寝てしまった。
フェイ君が寝て気持ちを整理すると私はやっと自分がこの小さな男の子に助けられたのだ理解した。
そして、私ーサラはこの男の子に………。
戦闘描写書けない…
今回は書くのが大変でした。
(2/24追記)
体調が良くないのと外せない用事があるのでしばらく休止します。
あと、設定を少し変更するかもしれません…。
設定を書いていた紙をなくしました。