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とある貴族次男の人生  作者: ノリで行こうぜ!
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六話 初めての……?

 

 あれから毎日朝と夜寝る前に瞑想をする習慣ができた。


 それだからか臍の周りあたりの範囲なら魔力を動かせるようになった。


 やっぱり身体の中を流れる魔力は動かせない。自由に動かせるのは臍の下あたりにある魔力だけなのだろうか?


 この間兄さんに読んでもらった無属性についての本は面白く色々と参考になった。その後兄さんにはこの本に書いてある文字について教えてもらいなんとか読めるようになった。しかもこの本、今から百年以上前に翻訳されたもので少し現在と言葉遣いが違うようだ。よかった兄さん聞いて…。でも兄さんすごすぎない?


 この本には身体能力強化の他に回復、魔力譲渡の方法も書いていた。実は無属性が使えるのは身体能力強化だけではなかったのだ。しかも回復と魔力譲渡は無属性だけ持っている人しか使えないそうだ。

 生活魔法については記述がなかったからなんとも言えないが…。


 魔力譲渡はその名の通り魔力を相手に譲渡することだ。他の属性だと色々と混じるから使えないそうだ。これは後々説明する機会があったら説明しようと思う。しかし魔力譲渡には注意点がある。同一人物にあまり多くやりすぎると魔力中毒を起こすから駄目らしい。いや、死に至るとかそういうのじゃなくて…その、譲渡された人は譲渡した人の魔力を求めるようになるのだが、魔力がたくさん含まれるのは粘液で…。ようはそういうことである。てか、身体能力しか伝わってないのそれが原因じゃない…。回復も似たようなもんだし。回復の説明を少ししておくと、回復は生まれもった欠損や怪我して時間が経ち固定化されたものには効果がない。そういうものを直すのは法術師が使う治癒法術だ。


 僕はこの三つをマスターしたい!



 ◇



 今日は先生が来る日だ。そう思ってワクワクしていたのだが…。


 結局その後3日間先生が僕の家に現れることはなかった。


 僕は驚いた。今まで一度もそんなことはなかったからだ。


 そして、今までなかったことに嫌な予感を感じる。ただ体調不良とか急用であれば何らかの方法で連絡を寄越すはず。だからこそ何かに巻き込まれたのではないか心配になる。例え、先生が強いとしても。


 だけど今の僕にできることはない。


 そわそわする気持ちを沈めるためか僕は魔力操作にいつも以上にのめり込んでいった。


 そのおかげで集中できていたのか魔力を両手まで動かせるようになった。長時間はできないけど。


 先生が来たのはそれから4日後の朝だった。


 いや、来たのではない。屋敷の玄関の前で小さな子供と一緒に倒れていたのを偶然メイドが見つけたのだ。


 サラさんと子供はすぐに屋敷の客室に運ばれ、両親は慌てて薬師を呼んだ。ちなみにこの世界の薬師は医師も兼ねている。


 薬師が家にいるのには訳がある。兄さんが体が弱く結構な頻度で体調を崩すため前もって薬師を住まわせているのだ。


 僕は話したことはないけど優しそうなおじいさんだ。


 それはさておきサラさんと子供を診断してもらうと子供の方は疲れて眠っているだけだそうだ。というのも僕はまだサラさんや子供をみれていないのだ。


 問題なのはサラさんの方だ。サラさんは魔力欠乏症と怪我がひどいみたい。


 そう話す薬師のおじいさんと聞いていた父さん、ステラ母さん、エトワール母さんは悲痛の顔を浮かべ、セレーネ母さんはなにかを我慢するような様子で涙を浮かべていた。


 その様子を見て僕、姉さん、兄さんは薄々察した。


 サラさんの容態が良くない。いや、それだけではないこのままではサラさんは死ぬということを。


 僕は泣かなかった。


 泣きたくなるほど悲しかった。


 でも泣かなかったのはどうにかサラさんを助けられないか必死に頭を働かせていたからだ。


 僕はまず薬師のおじいさんに聞いてみる。


 どこが治せないのか。


 僕がそう聞くとおじさんは目を見開き驚いた様子を見せるがしっかり答えてくれた。


 怪我は傷が残るが治せる。でも魔力欠乏症は現代では治すことができなくそのまま衰弱し死に至るそうだ。


 僕は考える。


 魔力欠乏症…そのまま意味ならば魔力が足りなくなっているということだ。


 どうにかして魔力を増やすことができれば治せるのか?


 でもどうすれば魔力を増やせるのか?


 うーん……あっ!あれならもしかしてサラさんを助けられるかも!


「父さん。先生に会いにいってもいい?」


「フェイ。先生は今大変なの。だから…」


 そう言うセレーネ母さんに父さんが言葉を挟む。


「セレーネ、フェイに会わせてあげよう」


「最後になるかもしれないから」父さんの言葉にはそういう意味が籠められているように感じられた。 


 父さんに連れられサラさんと子供がいる部屋に向かった。


「じゃあ、フェイ。父さんは外にいるから会ってきなさい」


「はい…」


 部屋に入ると包帯を全身に巻いてベッドに横たわるサラさんの姿が目に映り込む。


 僕が泣きそうになるのを我慢しながらベッドの傍まで歩いていくとサラさんがゆっくりと目を開けるのが分かる。僕はサラさんに声をかける。


「先生、僕です。分かりますか?」


「ふぇ…い…くん…?ここ…は?」


「屋敷です。朝、先生が倒れていることをメイドさんが見つけて」


「そ…う…あの…子は?」


「一緒にいた子供のことなら疲れていただけのようです」


「よ…かっ…た…」


 サラさんはほっとしたような顔をした。


「ど…うし…て…泣き…そうな…の…よ…?」


 僕は素直にサラさんに話した。今サラさんは怪我していることと魔力欠乏症であることを。そして、魔力欠乏症が現代では治せないと言われていることを。


「先生、僕はまだ諦めていません。だから今からすることを受け入れてくれませんか?」


 そう言って僕は先生の手を握り瞑想を始める。


 意識を深く落とし魔力を掴む。


 臍の下あたりにある魔力を両手まで引っ張る。


 軽く握っていた先生の両手を恋人同士がやるようにガシッと握る。


 両手にある魔力を流し込む。先生がピクッと動いたが気にせず続ける。 


 するとすぐに僕の魔力はなくなってしまった。


 先生に魔力を譲渡というか同調したからか先生の魔力がまだ足らないことに気づく。


 この世界の人間は生きていく中で魔力が必要だ。


 身体を動かすためにも魔力は使われる。


 それは自分の身体を見てもよく分かる。あの身体を流れる魔力がそれだ。


 ここから推察になるのだが魔力欠乏症は身体の需要に供給が追い付かない状態なのではないかと思う。本来生活する上で必要な魔力がなんらかの理由で他のものに使われたからなのではないか?


 それじゃあどうして使われたのか?それは死にそうだったからではないかと思う。


 普段は身体が本能的にリミッターかけていて使えないようにしているのだが危機が迫ると使えるようになると。


 そして身体を動かすために必要な魔力を使いすぎると魔力欠乏症なってしまうということかもしれない…。


 どうするべきか。僕の魔力はもう尽きた。


 そこで僕の頭の中にあの本の内容が思い浮かんだ。


「先生ごめんなさい!先に謝っておきます。でも治療に必要なことなんです」


 僕は先生の上に跨がりながらそう言い先生にキスをした。そして唾液を流し込む。汚いかもしれないけど治療に必要だからと割り切ってそのまま続けた。


 先生は最初は戸惑って力が入っていたが徐々にそれもなくなった。


 僕は先生が苦しくないか確認しながら息が続く限りキスを続けた。


 永遠にも感じられるキスを終えて先生の魔力を確認すると溢れるくらいの魔力があり顔も真っ青だったのが今や真っ赤に染まっている。


「先生、もう大丈夫ですか?…先生?」


「えぇ、だ、大丈夫よ…」 


 先生はなぜか目を逸らしながら答える。 


 先生が大丈夫そうなので立ち上がろうとする…が身体に力が入らず先生の胸に飛び込んでしまう。


「ひゃん」


「ご、ごめんなさい。力が入らなくて…」


 僕は慌てて顔を上げ先生に謝った。


「う、うん良いのよ。気にしないで」


 よーく見ると先生の耳は赤みがかっていた。さっき可愛い声をだしたことを恥ずかしがっているのかな?


 先生と話をしたかったが疲れていたのかすぐ眠ってしまった。


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