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【番外編2】勝負服裏話


 皆さまこんにちは、ヤマネと申しますなのです。

 今日はフリークス・パーティに参加される皆様に、姫様が着るドレスのデザインについて聞いて回りたいと思います。

 パーティで姫様達が着るドレスは実は全部ヤマネの手作りなのです。

 オーダーメイドなのです。えっへん。

 あっ、ちなみに騎士様方が着られる衣装は量産品です。

 デザインは同じだし、消耗が激しいから手作りにするのは勿体ないということらしいのです。

 それでも、姫様方の華やかな衣装はフリークス・パーティの名物の一つです。

 手抜きはできないし、できるなら姫様方に喜んで頂きたいので、ヤマネはこうしてデザインについて打ち合わせをしているのです。




 ……ややや、あそこにいるのはウミネコ様とエリサ様。

 早速、聞き取り開始なのです!

「あっれー、ヤマネちゃんじゃん。ちーっす」

「ちーっす、なのです、ウミネコ様。今日はエリサ様にご相談したいことがあるのです」

「私に相談ですか?」

「はいなのです。エリサ様がパーティで着られるドレスについて、デザインや色などのご希望を伺いたいのです」

「私のドレスですか? うーん、そうですね……それなら、ふんわりとした可愛らしいデザインの物が良いです。襟元に白い羽毛をあしらった物とかどうでしょう?」

「わぁ、素敵ですね。折角だから白いドレスにビーズをたくさん縫いつけて、キラキラした可愛いドレスにしたいのです!」

 ヤマネとエリサ様が、ドレスのデザインのことで盛り上がっていると、ウミネコ様がポンと手を叩きました。

「なるほど、羽毛のフカフカでボリュームの無さをカバーか! ……ゴフッ!?」

 エリサ様は笑顔でウミネコ様のお腹に肘打ちを叩き込みました。

 ……ウミネコ様は一言多いのです。




「こんにちは、サンヴェリーナ様、燕様、ドレスのデザインは決まりましたですか?」

「ヤマネ様が用意して下さったデザインは、どれも素敵で迷ってしまいますわ。お兄様はどのようなドレスがお好きですか?」

「お前に任せる。どうせ俺は見ることが叶わぬ身だ」

「申し訳ありません、お兄様。わたくし無神経なことを……」

「そ、そういう意味で言ったのではない! その……こういう機会でもなければ、お前もドレスなど着れぬだろう。だから、俺など気にせず、お前の好きな物を着ればいい」

「でしたら、お兄様が喜ばれるようなドレスがいいです」

「……俺は女物のことなどまるで分からん……が、白か薄紅がお前の()()に映えると思う。あと、露出が多いのは駄目だぞ」

「まぁ、お兄様ったら! ふふふ、ありがとうございます」

 サンヴェリーナとはチューリップの花から生まれた親指姫のことなのです。

「それなら、チューリップのお花のように可憐で愛らしいドレスを作ってさしあげたいのです。お色は燕様が望まれた白にピンクを重ねてみましょうか」

 それはきっと、サンヴェリーナ様の美しい()()に似合うと思うのです。

「素敵! どうぞ、よろしくお願いいたします」

「はい、お任せくださいなのです! 燕様も楽しみにしていて下さいなのです!」

「う、うむ」




「こんにちはなのです、ドロシー様。今日はドロシー様の衣装の件でお伺いしたのです」

「衣装なら動きやすい物にして頂戴。足技使うから、スパッツかドロワーズも付けて」

「デザインはどのようになさいますか? 色とか形とか、ご希望があればそれに沿った形でお作りさせていただきますなのです!」

「別に何だっていいわよ。興味無いし……あっ、でも、もしかしたら、その格好でクロウと会うかもしれないのよね……可愛い服なんて持ってないから、いつも、クロウの前では地味な制服しか着てなかったし……いつもと違う服なら……クロウもちょっとは気にかけてくれるかな……」

 ドロシー様はぶつぶつと何事かを呟いた後で、顔を赤くして言いました。

「……ね、ねぇ……やっぱり、その……衣装、可愛い感じにして頂戴」

「はいっ! お任せ下さいなのです! ドロシー様に似合う、可愛いお洋服を作ってみせるのです!」

「あ、ありがと……」




「こんにちはなのです、イスカ様」

「やぁ、こんにちは、ヤマネちゃん。今日はどうしたの?」

「はいなのです。実はカーレン様のドレスのことで相談が……」

「ドレス? なになに、フリークス・パーティって姫はドレス着るの?」

「はいなのです。それにあたって、どのようなドレスが良いか、カーレン様に相談したのですが『何でも良い』というお返事をいただきまして……そこで、カーレン様のパートナーであるイスカ様にご意見を伺おうかと思った次第なのです!」

「へぇ、ドレスって選べるんだ……それなら、あいつ胸無いから胸元はあまり開けないで、フリルとコサージュでボリューム出したげて。でも、それだけだとオレが楽しくないから背中はパックリ開いてる奴にしてね! 尻が見えそで見えないギリギリぐらいのラインで。あと、あいつの細い腰と長い足は数少ない取り柄の一つだから、ウエストはギリギリまで絞って、スリット深めにして欲しいね。これだけは譲れない! ……あー、もういっそオレがデザインしちゃって良い? 大丈夫大丈夫、オレ、こういうの得意だから。サイズも知ってるし。あっ、そうそう生地の色は赤がいいね。あいつには赤が似合うから。できれば深い緋色がいい。それとアクセサリーは……」

 イスカ様はカーレン様の容姿に、かなりのこだわりがあるようです。

 というより、カーレン様を飾り立てたくてウズウズしていたような……とにかくお目々がキラキラしていたので、カーレン様のドレスのデザインはイスカ様にお任せすることになりました。




「クロウ様、クロウ様。サンドリヨン様のドレスのデザインは決まりましたですか?」

「あぁ、露出が無くて地味ダサいドレスにしてくれ。つぎはぎが当てられてるとなお良い。あとは……あの不細工な顔を隠すほっかむりも必須だな。まぁ、せいぜい、誰にも見初められないぐらい安っぽくて残念で惨めな感じに仕立ててくれ」

 クロウ様の注文に、ヤマネはとても悲しくなりました。

「……それはサンドリヨン様が可哀そうなのです。ヤマネは姫様方に綺麗なドレスを着せてあげたいのです。サンドリヨン様、絶対ドレス似合うのです!」

「……だから、困るんだよ」

「何が困るんですか?」

「……だから! 他の奴らが、あいつに目をつけたら困るだろうが!!」

 そう怒鳴るクロウ様は、とってもとっても必死でした。

 でも……

「クロウ様は見たくないですか? サンドリヨン様が綺麗なドレス着てるところ」

「…………」

 あ、葛藤してるのです。

「……いつもの格好がいい」

 この時、ヤマネは以前見たドラマの台詞を思いだしたのです。

『ありのままの君が好き』

 つまり、そういうことなんだと思うのです。

 

(でも、ヤマネはサンドリヨン様のドレス姿も見たいので、ちょっと頑張ってみようと思うのです)


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