表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/164

【幕間10】妹、企む

 美花の目に映る双子の姉、如月優花はダメンズウォーカーならぬ、ダメンズホイホイだ。

 可愛いし(美花と同じ顔なんだから当然だ)優しいし、面倒見が良いし、おまけに底無しのお人好しなものだから、そんな姉の人の良さにつけこもうとする悪い虫が後を断たない。

 不幸中の幸いは、姉がそういう連中に目をつけられているという事実に気づいていないことだ。姉が気づいていないのなら、幾らでも対処のしようがある。

 こういう時、美花は姉と瓜二つの顔を有効活用することにしている。

 まず、姉に好意を持った男に姉の振りをして接触する。姉は美花の振りができないけれど、美花はその気になれば、完璧に姉の振りができる。

 草太や若葉も騙せたぐらいで、見破れるのは張本人の優花と母親ぐらいのものだった。その母親も死んでしまったから、今では姉の振りをしている美花を見破れるのは姉だけである。

 姉に好意を持っている男の前で姉の振りをする時は、あえて相手の男に優花とも美花とも名乗らないことがポイントだ。

 そうやって相手が勘違いした所で、向こうから告白しやすいシチュエーションを作る。奥手でなかなか告白してこない男なら、こちらから告白する。

 そうして告白をするなり、されるなりした所で自分の正体を明かすのだ。

「本当に付き合ってくれるの? 嬉しい! 美花、ずっとあなたが好きだったの!」

 ここで大抵の男は「しまった間違えた!」という顔をするが、美花が大袈裟に喜んでみせると、それ以上何も言わなくなる。

 大抵の男は本命が他にいても、告白してくれる女子がいたら、自分を好きだと言ってくれる方を選んでしまうものだ。まして、それが好きな女の子と同じ顔なら尚のこと。

 まぁ、その後の男達とのお付き合いについては割愛。

 大抵は三カ月ぐらいで向こうから別れを切り出してくるから、そんなに後腐れはない、とだけ言っておこう。

 とにかくそんな風にして、姉に近寄ってくる悪い虫は美花が丁寧に丁寧に排除していたのだ。

 姉は面倒見が良いから、女に甘えたがるタイプの男が寄ってくることが多い。

 そして、姉もまた優しいものだから、そういう男達を甘やかして、つけあがらせてしまうのだ。

 でも、そんなの駄目だ。美花は絶対に認めない。

 姉に一番に甘やかしてもらうのは美花達だと、昔から決まっているのだ。

 草太や若葉は良いが、よその男は絶対駄目だ。姉に甘えて迷惑をかけて良いのは美花達、家族の特権なのだ。


(それなのに! よりにもよって! どうして、クロウなんかが優花姉のパートナーになってるの!? マジ意味分かんない!! このままじゃ美花の計画がパァになっちゃう! これじゃあ、何のために美花が家出したか分からないじゃん!)


 とにかく姉からクロウを引き剥がし、それからなんてしてもイーグルに優勝して貰わなくては。

 きっとイーグルは優勝するだろう。前回のシングルバトルなるもので優勝しているらしいし、実際にすごく強いし。

 イーグルは優勝したら、美花にプロポーズする気でいる……それまでにうまく事を運ばなくては。

 今後の計画のことを考えると、姉がこっちに来てくれたのは、ある意味ラッキーだ。


(でも、クロウが邪魔! だいたい、クロウなんて優花姉の騎士に相応しくないのよ! 顔はいいけど性格最悪だし! 怒りっぽいし乱暴だし口悪いし! 優花姉の王子様になるなら、もっと優しくて紳士的で、お金持ちで優花姉を甘やかしてくれる人でなくちゃ!)


 例えば、そう……イーグルみたいに。


 開会式の後、ホテルの私室に戻ると、イーグルは美花に冷たい飲み物を勧めながら言った。

「オデット、君、お姉さんがいたんだね」

「うん、そうだよ。自慢のお姉ちゃんなの」

「へぇ。頭巾をかぶっていたから、顔がよく見えなかったのだけど、声がとてもよく似ていたね。顔も君に似ているのかな?」

()()()()()()()()()()

 大丈夫、まだばれてない。美花の計画はとっても順調だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ