胡桃割り人間
国家権力の一端を手玉に取り、人の道から外れたが…通学路には戻った正樹。
食パンをかじるユイは、正樹と腕を組んで歩いている。
「あんちゃん、あんちゃん」
「ご機嫌だな、ユイ」
「あんちゃんと一緒だから楽しいよぉ」
デレ(о´∀`о)デレのユイは正樹の肩に頬を擦りつけた。
正樹は目を細めて、うざったそうにため息を吐いた。
世界レベルの金髪の超絶美少女に抱きつかれて、この余裕。
「「「チッ」」」
二人の周辺を歩く雄から舌打ちが漏れている。
側から見れば羨ましい光景であり(男子目線)
恨めしがり家の童貞に
1刺殺(前菜)
2滅多刺し(メインディッシュ)
3微塵切り(デザート)
のフルコースをお見舞いされても、おかしくない状況である。
「肉欲はちっとも滾らないけど、いい気分だぜ」
ロリ味の無い美少女の頭を撫でる正樹。
豚共に見せつけるように。
「地雷でも踏んで四肢四散してから野良犬に肉片喰われて死んねばいいのに」と思われても仕方ない所業である。
ポケットに手を突っ込み、優越感に浸った。周辺の雄共を見下しながら歩いた。
「おはよう正樹!」
地方レベル美少女の胡桃が、正樹の前に現れた。取り巻き(雄共)を引き連れて。
正樹はヒラヒラと手を振った。
取り巻き(思春期真っ盛りの雄共)の目線は、あっという間に、ユイに奪われた。
「正樹…隣の子は?」
「おぅ…おはよう粉々のウォールナッツ、掲示板見てるなら言わずとも分かるだろ?」
「フギュン!何ぉっ!?」
誤魔化して笑う胡桃。艶々した黒髪が春風で揺れた。
「こっち来い、10分で済む、ちゃんと吐かせてやるよ」
正樹は鼻で笑いながら、ポケットから手錠を取り出した(オマワリサンのオトシモノ)
「私ヤジウマなんてネット掲示板知らない!興味ない!」
「お、軽く吐いたな」
胡桃は笑顔をキープしつつ、額から汗をダラダラ流した。
ユイは首を傾げて、ポケットからハンカチを取り出した。
「胡桃ちゃん、風邪?」
胡桃の額から流れた汗を、優しく優しく拭いた。
「んにゅっひぃ…」
胡桃はブルブル震えながら、踵を返した。音の壁を突き破る心意気で逃げ出した。
「じゃ!学校でぇえ!!!」
「!?(`・∀・´)!?」
ユイは驚き、目を丸くした。
棒立ちのユイは雄共(取り巻き)に囲まれた。屍肉に群がるゾンビのように物欲しげな目の取り巻き達。
「おはようございますぅ???」
ユイは???(*´∀`*)???とクエスチョンマークを果てしなく増産させた。
「ユイ、危ないからハンカチ捨ててこっち来い」
「はぁーい」
ハンカチは投げ捨てられ、宙を舞った。地に落ちた瞬間、ハンカチに群がる男子共。
特S級の特選和牛を食えなければ、A級の黒毛和牛の切り落としでいいや…の現象である。
「あんちゃん行こ、行こ」
ユイは再び正樹と腕を組み、すっぽりと元の位置に戻った。
二人は腕を組みながら、桜の雨に打たれて歩いた。
校舎が見えてきた所で、正樹はふと思い出した。
「ランとレンはどこだ?」