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ファッキンキューティ ニューカマー


始業式直前の教室。

生徒達は春休みで緩んだ気を、引き締めようという気はさらさらなく(意識高い系生徒を除く)、たらたらと春休み中の出来事を話し合っている。

正樹も当然、教室内に広がるムーブメントに飲み込まれた。


「正樹君、春休み何してたの?」

臨席の眼鏡っ子女子生徒は、問うた。生徒会長のような風貌の女子生徒。見たまま生徒会長であり、図書委員長も兼任している。


名前は黒崎 言葉(ことは)


正樹としては、胡桃と同等の美少女と思っている(※性的対象範囲外)


「俺?悪魔のような天使達に夢を見せられていたよ…ま、慌しかったとしか言えない」

ニュースキャスターのように、凛とした表情で回答した正樹。

幼女誘拐容疑者として、ニュースに出てもおかしくなかった男がこの表情。


「つまり…」

言葉は、メガネをくいっとあげた。

「悪戯な幼女達に弄ばれてたわけね」


「なぜ、そういう解釈をするのでしょうか?」


「正樹君的解釈には、慣れていますヨ」


「それじゃ、俺がロリコンみたいに聞こえるじゃないか」


「違うの?」


「貴様を名誉毀損で訴えてやる」

顔色を変えない正樹。

それを眺める言葉は、微笑んだ。

会話は途切れ、冷たい睨み合いが続いた。


「私は、君の真っ直ぐでイノセントな性癖を咎めたりしないよ」


「そう言ってくれるなよ、なんか胸がムズムズするわ」


「身体が認めたね、よしよし」

言葉は勝ち誇ったように笑った。


「お前と戦争しなければならないな、口喧嘩で勝敗をつける」

「お口で戦争するなら負けないよ」


言葉は小さく舌を出した。


その時、廊下から軽やかな足音が響き、教室の扉が開いた。

「はいはい、おはよー!」

女性教師が勢いよく入室した。

2年C組、担任の海原アリサだ。

生徒達からは[あさり先生]と呼ばれている。

「ちゅーもくっ!」

鶴の一声で、アリサ先生に視線が集まった。

人差し指を避雷針のように、ピンッと立てた。

「早速だが転校生を紹介するぅ!カモンニューカマー!」


回転寿司のように、入室早々ネタを運んでくるアリサ先生。

生徒達はだらしなく口を開けて、どのような転校生が来るのかを想像(妄想)した。

転校生というワードを聞いた、ほんの一瞬でだ。


扉から転校生の靴の爪先が現れた。

「「おお!」」

生徒の皆が息を漏らした。

その一瞬を見た者は、スローモーションのように時の感覚が緩やかになった。


教室に誰が入ってくるかは、読者諸君には予想がつくだろう。



教室内には、男子生徒、女子生徒が、鷄そぼろ丼のように綺麗に半々の割合で詰め込まれている。


という事で、想像(妄想)も男女別々に大きく二分化した。

(極一部の生徒、鷄そぼろ丼彩り要員のロリコングリーンピース野郎を除く)


思春期真っ盛りな男子生徒達は、可愛い女子生徒を想像した。

絶賛乙女盛りな女子生徒達は、イケメン男子生徒を想像した。


教室内に、ポジティブな妄想が綿毛のように飛び散り、舞い上がった。

「どんな子かなぁ?」


「男の子?イケメン?」


「大人しくて可愛い子だといい」


「○○○○がおっきくて、○○○なギャルがいい」


ちなみに人は想像(妄想)をする時、ポジティブな想像(妄想)を抱く瞬間、無意識にネガティブな想像(妄想)も抱く。


陰と陽のように。期待と不安が入り混じり、胸が激しく鼓動するのだ。


己の願望を満たす異性、それを期待する事が"陽"ならば……。

陰は…。


男子生徒は、こう抱く。

「俺よりイケメンな男子が来たら、ヤバい!!」

女子生徒は、こう抱く。

「私より美少女来たら、ヤバい!!」


と…いう感じで。

己の階級(ランク)を存在を脅かす存在を恐れる。



正樹は悪魔チャンズ(美少女)が入室してすぐに、大半の女子生徒がエクトプラズム混じりのため息を吐くだろうと予測した。


「さぁ…教室のバランスが崩れるぞ」

正樹はポツリと呟いた。

今回、ファッキンキューティニューデビルな転校生を見て、悦ぶのは男子のみであろう…と予想した。


新顔三人が、間隔を開けて入室した。

後光が差すような美少女三人の登場に、生徒の皆が息を飲んだ。

レンは、ニコッ(*´_`*)と清らかに微笑んでいる。

ランは…アアン?( ゜д゜)犬のフンでも踏んでしまったかのように不機嫌な表情だ。

ユイは、モグモグ(*´ω`*)校内の売店で買った生クリーム入りメロンパンを頬張っている。


「ユイ…ぶふっ」

正樹はオヤツを貰って喜ぶ犬のようなユイの表情を見て、吹き出して笑った。


「あの赤髪の子カッコいい…」

「すごぉ…イケメン女子好きい…」

「ちょっと不良っぽいけど…そこが素敵」

女子生徒は、ランのボーイッシュなルックスにハートをドギュギュンと射抜かれた。

超絶美少年に見えてしまうランは、女子生徒の欲望を満たした。

目ん玉がハートマークになっている女子生徒達を観察した正樹は、首を傾げた。

唯一、言葉だけが聖母のように転校生を眺めている。


「予想外だ……ま、血みどろの虐めが起きる事は無さそうだな」


「女子はね、同性にもキュンキュンできる生き物なのですョ?」


「そうなのか?」

言葉は頬杖を突き、鼻を鳴らながら、何度もうなずいた。


「…か、可愛い」

「…美少女三人…まじやべぇ」

対して、男子生徒達は肩を縮こまらせている。

超絶美少女が三人登場した事に、喜んではいるが……。

高めに設定した妄想を、軽く飛び越えて現れた美少女達にビビッている。


アリサ先生は、一通り生徒達の反応を眺めた。

口を緩ませ(*^ω^*)弛ませ、チョークを持ち上げ、カッカッカと黒板に三人の名前を書きこんだ。

「三人のかわい子ちゃんのお名前わぁあー??」


桑野レン

  ラン

  ユイ


「桑野…ん?」

「は?苗字?」


教室内の視線が、正樹に集まった。

視線には様々か感情が入り混じっている。嫉妬、恨めしさ、殺意、etc……

正樹は苗字を揃える事が、後々どうなるか、どんな問題が起きるかを、予期していなかった。


「あんちゃーん!」

ユイは口端に生クリームを付けたまま、ニッコニコと笑いながら、ブンブンと手を振った。

正樹は苦笑いを浮かべながら、手を振り返した。


「お、おぅ……」


正樹は背中に冷たい汗が流れるのを感じていた。


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