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黒服トゥギャザー・Ⅱ

続き。


「お、追わなきゃ!」

あのままでは女の子が連れていかれてしまう。

見失う前に取り返さなければ。

そう思い、駆け出そうとすると黒田さんに腕を掴まれ引き止められた。


「待て、事務所への連絡が先だ、急いては事を仕損じるぞ。」

そう言って黒田さんは僕の腕を掴んだままスマートフォンを取り出した。


「だけどこのままじゃ!」

応援を呼ぶ間に、あの女の子は怪我をしてしまうかもしれない、最悪の場合死んでしまうかもしれない。

そんな事、あってはならないんだ。


「事件解決の確率を上げる為だ。

このチャンスを掴めなかったら、また子供が攫われてしまう、傷ついてしまう。それだけは避けなければならないんだ。」

黒田さんは真剣な顔でそう言った。

確かにそれが正しいのかもしれない。

けれど___


「それでも僕は、泣いているあの子を見捨てる事なんて出来ないッ!!」


「おい!待て!!」

そう叫び、黒田さんの静止も振り切って先程子供が連れていかれた方向へ駆け出す。


あの子から感じてしまった。

記憶を失ってしまった僕だからこそわかる

状況が理解出来ず、嘆くことしか出来ない苦しみを、

だから見捨てる事なんて出来ない。





暫く走り続けると、路地より少し広い道で再び誘拐犯と子供を捕捉する事が出来た。

誘拐犯の方はスキンヘッドにタトゥーを入れていて、好んで近づく者は居ないような雰囲気を放っている。


「子供を助けたい一心で飛び出してきたけれど…どうするかな。」

電柱や看板に隠れながら尾行しているが、バレるのも時間の問題だろう。

魅華さんの様に相手を制圧できる力も無い、やはり黒田さんの言う通りにするべきだっただろうか。


そんな事を考えていると、スキンヘッドの男が子供を抱えたままこちらを向いた。

バレたのかと思い、心臓を鷲掴みにされた様な悪寒が全身を駆け巡ったが、また方向を戻し歩き始めたため、ホッと息を吐く。


「なんだよ…もう…。」

安心して再び、物陰から顔を出すと、



触手が勢い良くこちらへ向かって伸びて来て、僕を後方へ跳ね飛ばした。


「ぐっ……はッ………!!」

地面を何回もバウンドし、道の脇にあったゴミ箱へ突っ込んだ。


「なん…なんだ……?…」

頭がフラフラする、恐怖で足が動かない。

この感覚は、模倣子に退治した時にも味わった。


お呪い(おまじない)の力だよ、パンピーちゃん。」

顔を上げるとスキンヘッドの男が子供を担いだまま目の前に迫っていた。


「お前が…敵性能力者か……!…」

言葉と共に口から血が溢れる。

薄れゆく意識の中で、男に問いを投げかけた。


「お前等が俺達を何て呼んでいるかは知らねぇが、まあその通りだろうよ。 運が悪かったな、パンピー」

男はそう言って薄気味悪く笑うと、左手を広げた。

すると男の背中から触手が蠢き出て、動く事すら出来ない僕の首に巻きついてきた。


「く、そ…………」

こうなってしまったらもう僕になす術はない。

首の骨を折られるか、窒息死させられるか、それは定かでは無いがどの道僕を待つのは死のみだろう。

諦めて目を瞑った、その時。



「死ぬのは始末書書いてからだ。新入り!」

そんな言葉と共に放たれた数発の銃弾が、僕の首を締め付けていた触手を貫き、切断した。


「がっ…………誰だ…!!」

男は顔を歪め触手をしまうと、銃弾が飛んできた方向を向く。


「悪党に名乗る名前は無いな。」


「黒田さん!!」


「いや、言うなよ…。」

男に銃を向けていたのは黒田さんだった。


「おい!黒田とやら、今すぐ銃を下ろせ!さもないとコイツを殺すぞ!」

そう言って既に気絶してしまっている子供を示した。

そして次の瞬間に白目を剥いて崩れ落ちた。


「え……」

崩れ落ちた男の後ろに立っていたのは、



子供を抱えた黒田さんだった。

「お望み通り銃を下ろしたってのにな。」

そう言って手の中の銃を回してベルトにしまう。

もう1人の黒田さんは、子供を取り返しながら男を銃のグリップで殴り気絶させたらしい。


「黒田さんが…増えた?」

未だ状況を読み込めない、確かに黒田さんは二人いる。

どっちも同じ格好をし、全く同じ容姿だ。


「魅華の野郎の『力』を見たなら大体分かるだろ?」

そう言って指を鳴らすと、男の背後に立っていた黒田さんが子供を地面に寝かせ、黒い煙と共に消えた。

黒田さんも魅華さんや男と同じ、能力者だったのか。


「俺の力は『沈黙の黒(メン・イン・ブラック)』、自分と身につけている物質を複製するのさ。

黒い服を着てなきゃ発動出来ないがな。」

僕に自分の能力を説明しながら、崩れ落ちた男の方へ歩いていく。


「さて、コイツを運ばなきゃな…。」

自分1人では長身の男を運ぶの不可能だと判断したのか、再び自分を一人増やし、男を左右から肩を組むように持ち上げた。


「子供を頼むぞ。」

黒田さんは顎で子供を僕に示し、歩いていった。


「もう大丈夫だからな。」

僕も急いで子供に駆け寄り、背負う形で子供を持ち上げ黒田さんを追った。


どうか───




───どうかこの子の記憶が、

夢の中の事のように消えていますように。




思ったより戦闘になりませんでした。(反省)

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