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記憶ロスト
─────何か違和感を感じ目を開ける。
開いた目に飛び込んできた景色は見たことがないものであった。
あちこちにそびえ立つ灰色のビル、バチバチと音をたてながら点滅するイルミネーション、自分が今立っている横に広い歩道、
どれも見たことがない物だった。
それと同時に今迄何をしていたか思い出せないのにも気付く。
名前すらも忘れてしまっていた。
「どうなってんだ……、俺はどうしてこんな所にいるんだ……?」
慌てた様に僕はあたりを見回す。やはり見た事が無い景色だ、このまま此処に居た方がいいのか、何か手がかりを掴むために歩き出した方が良いのか、暫く考え、歩き出した。交番を探して相談すればどうにかなると思ったのだ。
暫く歩いていて気付いたことがある。
「人が……全く居ない。」
コンビニが24時間営業し、残業なんか当たり前のこのご時世で、人が1人も居ないというのはおかしい、気味が悪くなり、早く交番を見つけようと、駆け出した。人が全く居ない街に足音が響く。
それが失敗だった─────
足音に引き寄せられたのか、『何か』が僕の前に降り立ったのだ。