Summer works!
ジリリリリとオフィスの端に置いてある黒電話が鳴った。
俺が顎で支持をすると近くにいた秘書がツカツカと歩き、電話にでた。
「もしもし、こちら大田原建設です。ご要件をどうぞ」
そんなやり取りを見て、俺は思わず吹き出しそうになった。そんな会社はとうに潰れている。俺は殺し屋、依頼を受ける時に使われていないこの会社の名前を使っている。
今頃、依頼人はうちで購入した家にトイレがないというバカバカしいクレームをつけてるはずだが、もちろんそれは合言葉である。
「わかりました、お電話変わりますね」
秘書の言葉と同時に俺の机にある電話が鳴り、受話器をとる。
「もしもし」
『もしもし、なぜ電話したかは分かるわよね?殺し屋さん』
「いいからさっさと詳細を話せ、まずはそれからだ」
『噂通りのせっかちさんね、まぁいいわ。もうファックスを送ってある』
チラリと部屋を見渡すと秘書が紙束を持ってくるのが見えた。
渡された紙束に目を通す。
なんだこりゃ、ふざけてんのか?
電話の向こうの声は、
『馬鹿らしい内容だと思うでしょ?私は水谷、偽名かどうかは疑ってもらって結構。先に言っておくと私は女学生です』
「学生が何だってその学校の先生を殺そうとするんだ?」
『私達の高校では夏休みに入ったんだけど、不自然に課題が多いの。そして夏課外が中止になった』
「そんなことでか?まだなんかあるだろ」
『そう、アナタには先生が何故あんなに絶対に終わらないような課題を出して、夏課外を中止したかを探り、ふざけた理由ならば速やかに殺して欲しい』
「お前がバカで終わらないだけなんじゃねぇのか?」
『私は成績優秀者として奨学金を受け取っているのだけど』
水谷と名乗った声がプライベートなことに口を挟んだせいか、イライラした口調になっていた。
だが、それは俺にとって喜ばしい。俺は他人をイラつかせるのが大好きだ。
「この学校、高校だよな?報酬金は出せんのか?」
『それなら御安心を、2枚目の紙に額は書いてあるわ』
……ほう。学生のくせにこんな大金を持ってんのか。
「あと一つ、ふざけた理由かどうかは俺の判断か?」
『……お任せするわ』
俺はその殺しを指定された男、村里……だったか。 そのハゲオヤジが学校から出て繁華街に向かったので、俺もタクシーで追うことにした。
水谷とかいうやつは、恐らくそのことについて1度村里と派手にやったんだろう。じゃなきゃこんな手段は使わんか、女は怒らせると怖いな。
しばらく監視していると村里は裏路地のキャバクラにこそこそと入っていった。まさかそこに通うために……。と思うと顔のにやけが止まらず、少し焦った。
少し離れた廃ビルの屋上からスナイパーライフルを取り出し、スコープで店の中を覗く。
ハゲアタマは誰かと話しているようだが、キャバ嬢とな話すにしてはやけに真剣だった。
話し相手は図体のでかい男、見たところキャバクラの客の1人か。
男は怒った様子で村里を怒鳴りつけたり、時には飲んでいたビールを体ににかけたりしていた。
村里は諦めたように、キャバクラから出ると車で去っていった。
……なるほど。生徒のためにそこまでする教師も珍しいか。村里の持つクラスの生徒の1人の父親があの男だとすると全て合点がいく。
キャバクラ通いをして、金を荒使いし家族に暴力を振るう生徒の父親を説得するためにキャバクラへ通い、そのために村里は夏課外をね……。
あのハゲアタマに似合わずなかなかの熱血教師なのだろう。
そう考えて、俺は秘書に迎えの車を出すよう指示すべく電話を取り出した。
『どういうことよ!村里のやつ、まだ生きてるじゃない!』
「つまらない理由じゃないなら殺さなくてもいいと言わなかったか?」
『ええ、言ったわ!でもあなたはどんな理由か私に伝える義務があるでしょう!』
「やなこった」ガチャリ
全く、癇癪持ちの女の相手は疲れる。イラつくのと癇癪を起こすのとは違うんだよ、お嬢ちゃん。
俺は受話器を戻し、煙草を吸うべくベランダに向かった。
繰り返し言うが、俺は人をイラつかせるのが大好きである。
短編は初挑戦でした。
これからも気が向いたら書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。