双子
一子と二葉という名前の姉妹が居る。
彼女たちはよく似ているが、少しだけ違うところがある。姉の一子は、妹の二葉より少しだけ少ないのだ。
例えば名前。一子は一、二葉は二で、一子の方が数が一つだけ少ない。
例えば告白された回数。一子は十回、二葉は十一回。
例えばテストの点数。一子は九十点、二葉は九十一点。
他にも色んなもので一子の方が少しだけ、ほんの少しだけ少なかった。一子は二葉の姉ではあるが、もはやその肩書きも無意味になるほどに、色んなものにおいて少しだけ少なかった。
そんな二人が交通事故に遭いかけたことがある。横断歩道を渡っている時に信号無視の車に轢かれそうになったのだ。
一緒に買い物へ行った帰りのことだった。その時、一子より二葉の方が横断歩道の少し先を歩いていた。一歩だけ、先を歩いていたのだ。
楽しくお喋りをする二葉の目と鼻の先を、その信号無視の車は通って行ったという。二葉があと一歩だけ、前に出ていれば轢かれていたそうだ。
私はペンを置いて、白い病室の窓から外を見る。白いカーテンが風ではためいて、二人の姉がこちらに来ているのが見えた。私は急いで、今書いていた小説もどきを鍵付きの棚に仕舞って、彼女たちが病室に着くのを待っていた。
きっと二葉の方が一子より、一歩だけ早く病室に入ってくるのだろう。そう想像しながら。
こんにちは、雨時雨と申します。諸事情によりこの話だけ、作者名を変えています。
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