振り込みたい詐欺

「もしもし？　おばあちゃん、オレだよ」

「あ〜、たかしかい？　」

「そ、そうだよ。たかしだよ」

「どうしたい？　何年か前に来た以来じゃないか」

「う〜ん、実は仕事でミスしちゃってね」

「ええ？！　本当かい？　」

「うん、それでね。ちょっとばかしお金が必要でね」

「あら〜、それは大変だわ。どんな仕事をしているんだい？　」

「え？　し、仕事は営業かな。それでね、お金がちょっと」

「営業？！　はいや〜、それは大変だね〜」

「そうなんだ、だからちょっとお金が」

「いくら必要なんだい？　」

「う〜んとね、１０万必要なんだ」

「１０万か、そういえばたかしは一人暮らしか？　」

「そ、そうだけど」

「お父さんの家は出たんだね？　」

「そ、うだよ。仕事しているし、ね。ハハ」

「だったら、生活費も含めて２０万くらい渡しておくよ」

「ええ？！　そんなに？　」

「まあまあ、受け取っておきなさい」

「あ、ありがとう。おばあちゃん」

「そういえば、たかしが集めていたあのフィギュアは今も集めているのかい？　」

「フィギュア？　あ、うん。集めているよ」

「最近、あれの最新作が出ての。たかしも買うのかい？」

「どうかな？　とりあえずおばあちゃん、お金いいかな？　」

「お〜、そういえば」

「じゃあ今から振り込み先言うね。――銀行の――――――だから」

「わかった、わかった。そういえば、りんごとか食べるかい？　食べるんだったら家に送るけど」

「い、いやとりあえずお金お願い」

「そうかい。わかったよ」

　ガチャピン。

　プルルルッ。プルルルッ。

「あ〜、よしえさんかい？　」

「あら、お母さん、どうしたの？　」

「いやね。たかしがやっと働いたとさっき電話があったから嬉しくてね」

「えっ？　あいつならずっと家にいるけど……」