共通パート
金曜の放課後、皆が家に集まり、わたしが幹事の女子会に来ました。
「あのさー昨日届いた紅茶があるんだけど!飲まない!?」
紅茶マニアのわたしは茶葉を集めるのが趣味です。
今日は友人達に紅茶を振る舞おうと思っていますが―――――
「あんまり飲まないけど…個人的にはミルクコーヒーがいいわ」
「あーアタシ、緑茶派なんだ」
「オレンジジュースある?」
「ルイボスティー」
「ジャスミンティー」
「オンリーハーブティー」
そんなことを言われても笑顔、笑顔で対応。
自分の分の紅茶を入れていたところ、知らない男の人の顔が浮かんだ。
幻覚かな?
皆が帰った。
「なんでチャイがないの?」
「自分で作ろうねお姉ちゃん」
明日が休みだから、夜更かししてる間にいつの間にかわたしは寝ていた。
今日は土曜日、休日の為いつもより遅く起きた。
話し声が聞こえるからぼんやりしながら部屋を見渡すと見知らぬ美形達が部屋を占領している。
「…おはよ」
「はい、おはようございます」
「おっはよー」
(今日もみんな元気だなあ)
あれ…初対面なのになんでこんなことを思ったんだろ?
「ごきげんよう」
彼等はただの美形ではありません。
「あー体がかゆい」
と誰かが言って体をかきむしる。
ぽろりと床に落ちたのは皮膚ではなく茶葉だった。
目をカッと開き、わたしは何も言えないまま思考が停止。
「飲むか?」
「要りません」
あの…誰か教えてください、彼等は紅茶ですか?
「なにじろじろみてんだ早くお湯かけろよ」
どうやら朝起きたら紅茶が擬人化してしまったようです。
いや、寝ぼけているだけにきまっている。
これはきっと夢だ!!
部屋の中に沢山人がいる。
夢ではなかった。
「えっと…茶野田紅葉さん?」
「はい…」
眼鏡の人?が心配そうに見ている。
「我々は茶葉の精霊だ」
白髪の少年が自信たっぷりに何者なのかを説明してくれた。
「なんだあ…紅茶が人間になったんじゃないんですね…」
あれ?なんでそこで残念だと思ったんだろう。
「ね、いきなりでわるいけど、僕たちここに住んでもいい?このお家広いし!」
橙頭の無邪気な少年が一人用ソファを跳ねている。
…ベッドじゃないからいいか。
でも泊まられるのは困る。
「困ります!姉が部屋に入って来たら絶対唐辛子の種を塩のように撒かれて部屋が辛くなりますから!」
塩には清める力があると言われている。
それを唐辛子の種にすればもっと祓えるはずだと姉はいっていた。
「すごい恐ろしいお姉さんですね」
「似ていないんですね…貴女に」
薔薇を持ったキザそうな男性とターバンを巻いた色黒の男性が苦笑いを浮かべている。
「いい加減にしろよテメェ等、人間に深く干渉しすぎんな」
先程までまったく話さなかった金髪の目付きの悪い青年が、驚くほど他の紅茶精霊を威圧している。
「サムセイの言う通り、迷惑になっているようだ」
黒髪の男性がチラリと私を視る。
「俺は迷惑がどうとか言ってるんじゃない
人間に深く関わるなっていってんだよ
精霊王もそういってたろ」
金髪の青年はフイとそっぽを向く。
「関わるなって言われても、精霊王が人間の女の子に奉仕してこいっていったんだよ?」
頭に丸い飾りを着けた軽そうな優男が、ひとり優雅に笑って茶を啜る。
「キャンディーノ、お前僕を差し置いて茶を飲むとはいい度胸をしているな」
王冠を乗せた私と同年代の少年は凄まじく怒りを露にしていた。
「まあまあプリンス!落ち着きあそばして」
フリフリのリボンを頭に着けた女性が、怒り狂う寸前の少年を宥める。
「レディは相変わらず気色悪い格好だな!!」
明るい金髪の少年がにこやかに女性を貶す。
しかし悪気がなさそうだ。
「そういう茶葉から生まれただけだし…」
レディはいじけている。
「かわいいのに…」
「そうかな?」
まるで王子様のような少年から独り言に返事をされてしまった。
「サムア、共にお茶でもたしなもう」
この二人仲がいいのかな。
「お茶はいいね、君がいないともっといい」
違うみたいだ。
「そろそろいいかな~?」
「…ずっと待ってた」
すっと現れた緑色の髪の二人。
「ハーヴェにミール、お前らいたのか」
「…ずっといた」
全然気がつかなかった。
「庶民の家にしてはそこそこだな」
「キリマティー……人間界でも有名な菜園時家に並ぶ富豪ですよ」
また変な人達が現れた。
ここって菜園時に並ぶほどすごかったんだ。
知らなかった。
「人の娘」
「はい!?」
急に話しかけられるなんて、すごく驚いた。
「次に会うときまで、俺様が何者か当ててみろよ」
それだけ言うとすぐに消えてしまった。
あの二人は何をしに来たんだろう。
「みんなの知り合い?」
「知らないな」
「それより一人でもいいから泊めてよ!」
「え…」
どうしよう。