日曜日のニート
ソファにうつ伏せて転がっていた彼女のミニスカの中に顔を突っ込む。
バットマンのマークがバックプリントされたローライズのぱんつが小尻を包んでいる。そこへ顔を押し付ける。彼氏の特権である。
思う様クンカクンカする。蒸れを気にして下着を付けたがらなかった彼女だが、今日は日がな一日家にいたせいか蒸れどころか匂いもない。
まっこと吸血鬼というのは面妖である。面妖なので俺がこうして直々に色々とチェックしてやらなければならない。ひとまず臀部の肉付きはいつもどおりに程よくプリンっ! としている。尾てい骨のあたりに額を押し付けてふるふると顔を揺さぶるとそれに合わせてぷるぷる揺れる尻。蒙古斑があれば子どもの尻としても通用しそうな肌触りの良い尻である。
「主どの」
尻の持ち主がぶすっとして本から顔を上げる気配がする。スキだらけで寝転がる彼女に辛抱たまらなくなった俺はとるものもとりあえず顔から彼女の尻に突っ込んだのであった。
彼女──カグヤのかかとがゲシゲシと俺の胸板を蹴ってくるが構わず綿パンの芳しい匂いをクンカクンカ楽しむ。クンカクンカ! スハー! スハー!
「主どの!」
かかとが水月に入る。
「グホァ!!」
俺はソファから転げ落ちた。仰向けになった俺を見下ろす、いや見下すようにカグヤの顔が覗く。
ほっそりとしたたまご型の顔だ。香椎由宇とかりょうとか常盤貴子とか昔の池脇千鶴とか(詳しくは各自おググりください)。今風ではない太めの眉と一重の目蓋、ちょっと鋭すぎる八重歯がチャーミングである。吸血鬼という言葉が持つイメージとは裏腹にカグヤは日本人らしい美女だった。
「買い物は?」
「済ませた。片付けもした」
「うぬうぬ。ようやく調教の効果が出てきたようじゃのう」
調教とは人聞きの悪い。やれと言われればやる男ですよ、俺は。
「なんじゃ? やれと言われてやるようではまだまだママっ子よ。やれと言われた時にはもう! 『やった!!』と言えるようでなくてはな」
手にしている本のタイトルから今読んでいるページまで分かりそうなことを曰うカグヤ。日に日にアレな感じに成長していて俺としては嬉しい限りだ。
その喜びを噛み締めつつ再び尻に顔を突っ込む。
「なんじゃ、今日の主どのは甘えん坊じゃのう」
実に慈悲深い声音だが密かに笑いを噛み殺しているのを俺は知っている。尻肉がわずかに緊張しているから分かる。
クンカクンカ! スハー! ス……。
「なんだかんだブラブラして一年。兵六玉の主どのでも罪悪感くらいはあるようで安心安心」
ハァァァ……。沈む俺の顔をぱっつぱつの尻たぶが受け止めてくれる。
勤めていた会社が倒産して一年。俺のニート期間も一年。このままではダメだと思いながら、しかしここまで来てしまった。
なにせニートは楽すぎる。日がな一日カグヤとちゅっちゅしてても誰も怒らない。
さらに素晴らしいことにカグヤのギャンブルの腕前が常軌を逸している。普通の女ならキレそうなパチスロ・競馬・ボートのデートがそのまま稼ぎになる。デイトレで小銭を稼ぐことも忘れない。
マーヴェラス!
おかげで俺はこのザマだ。
「千年の倦怠はそんなものではないぞ?」
「そうだろうよ」
尻に声がくぐもった。
カグヤの封印を解いたのは誰あろうこの俺だ。だからこそカグヤは俺を主と呼ぶのだ。
そして俺は尻に顔を突っ込んでいるのだ。