背中と君の銃声と。
ジェイドは背中の大剣に右手をやり、振り回すようにして両手で構えた。手の中で少し回し、握り込む。真っ直ぐに一体のトリープを見据え、飛びかかった。身体中に熱い血が滾るのを感じる。ただ目の前にいる敵を屠ることだけを考えろ。重ねられた斬撃に、流石のトリープも圧された。次で、決める!!振りかぶったジェイドに、影が差した。
「しまっ...!!」
やられる、と思ったとき、すぐ後ろで聞きなれた頼もしい音がした。
トリープがアーリーンに向かって走り出す。
「ジェイド!!ぼんやりしてんじゃないわよ!!死にたいの!?」
ジェイドの背中に高い声が飛んできた。その問いには答えず、懐に飛び込まんとしていたトリープを薙ぎ払い、最後とばかりに大剣を突き込んだ。日が落ちかけた空に、獣の毛が舞った。
日が完全に暮れて、迂闊に動けなくなってしまった。捜索の方は、あの良く言えば大らか、本当のことを言えば大雑把なライアン上官のことだ。おそらく放置だろう。つまり、野宿である。携帯していたマッチで火を起こし、トリープが近づくのを避ける。火が消えないように、交代で見張りをすることにした。
「寝たい」
そういうなり、アーリーンは横になって寝てしまった。軽く呆れてから、五つ下の小さな少女であったことを思い出す。男顔負けの射撃の腕と、よく回り、切れる頭を持つ彼女は、なかなかそれを感じさせないのである。
顔に絹のような髪が一房掛かり、ジェイドはそれを手で払いのけてやった。
しん、と音がしそうなほど静かな闇の中、ジェイドは初めて彼女に会った日のことを思い出していた。
こんにちは栄本です。見てくださっている方がいることを感じられて嬉しいです。これからもどうぞよろしくお願いします。
投稿してみて短いと感じたので、足しました。次回は出会い編やろうと思ってます。