紅茶とパイと。
華奢なティーカップに注がれた紅茶が、緑色の目を映した。トリープ討伐隊の天才少女と謳われるアーリーンは、それを感じさせない愛らしい手で6つ目のパイを取った。
「おい、アイリーン」
思わず声をかけたのはジェイドである。
「アイリーンじゃない、アーリーン」
「変わんないだろが。それよかもうやめとけ。太るぞ」
「太る」その単語に、ウェーブのかかった艶やかな茶髪が跳ねた。こいつ、ありえない!!
「全っ然違う!太るゆーな!!このバカ!」
叫んだと同時にアーリーンが投げたパイをまともにくらって、コンマ数秒。
「お前な...食べ物投げる奴があるかこんの馬鹿野郎!!」
「じゃあティーカップ投げてあげればご満足頂けたわね!次回はそうするから感謝しなさいよ!!」
「誰が感謝するか!」
ジェイドはパイを手に取ると、仕返しとばかりにアーリーン向けて、
「ジェイド!アーリーン!」
ドアが勢い良く開き現れたのは二人の直属の上官であるライアンである。
5つも年下の少女の顔にパイを付けようとしているところを上官に見られ、固まっているジェイドを余所にライアンは叫んだ。
「トリープだ!至急討伐!!準備しろ!!」