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欲望の「悪魔」

作者: 鬼邪天邪鬼

初めまして。鬼邪天邪鬼です。初めて書いた作品です。短いのでゆっくり見て行ってください。

ある日の早朝。俺は森の中で目覚めた。もちろんそんなところで寝た覚えはない。

「どこなんだここ...」

起きたばかりで状況の判断できない俺はしばらく迷っていた。だが意外にもすぐに自分のいる場所がわかった。

「あぁ、ここか。でもなんでこんなところで俺は寝ていたんだろう...」

少し寝癖のついた髪を触りながらつぶやく。状況の理解はできなかったがやることは一つだった。

「とりあえず帰ろう。どうせ誰かがいたずらでここまで運んだんだろう。でも、なんでこんなこと...」

この答えもすぐにわかった。今日は俺の22歳の誕生日なのだ。仕事は休みをとっていた。久々の休暇なのでゆっくりしようと思っていたのだ。

「サプライズなのかわからないけど最悪の目覚めだ。帰ってクラッカーでも鳴らされたら仕掛け人全員正座させてやろうか...」

ぶつぶつと言いながら早足で森から出ようとする。しかし異変に気付いて歩みを止めた。

「...道がない?」

いつも森に出入りする道がどこにもなかった。俺は動揺し、呆然とした。少しばかり呆然としたあと周りを見渡すと1人の人影に気づく。

「...誰だ?」

俺が聞くとそいつは低いトーンで答えた。

「悪魔です」

俺はまた呆然とした。朝起きたら森の中にいて悪魔に会う?そんなファンタジーは二次元で充分だ。

「人をからかうのもいい加減にしろ。誰の頼みか知らないが、こんなサプライズはいらないんだよ」

「サプライズですか。確かにそうかもしれません。あなたは選ばれたのです」

自称悪魔は答える。その答えをろくに聞かずに俺は話す。

「俺はこんな誕生日パーティはいらないし望んでもない。お前らが勝手にやったことだろ。第一お前は角も生えてないし羽もない。悪魔を演じるにしては適当すぎるだろ」

自称悪魔は少し考えて言った。

「それは人間の勝手なイメージです。実際角が生えているのなんて上級の悪魔だけです。羽なんて魔王様でも生えていません」

「そんな言い訳はどうだっていい。俺は早く帰りたいんだ」

「お待ちください」

自称悪魔は冷静に俺を呼び止める。

「まだなんかあるのか」

「あなたの願い事を2つだけ叶えて差し上げましょう」

「まだそんなこと言うのか。できるわけないだろ」

「なるほど。まだ信じてもらえてないわけですね」

「だからからかうのもいい加減に...」

俺が言い切る前に自称悪魔は指を鳴らす。すると辺り一面が暗くなってしまった。

「お、お前なにをした!?」

「信じてもらうために辺りを暗くしてみました。大丈夫です。すぐに明るくしますよ」

自称悪魔はもう一度指を鳴らす。すると辺り一面が明るくなっていく。

「本当に...悪魔なのか?」

「はい」

俺はこの悪魔を信じざるを得なかった。なにか仕掛けがあるようには見えず、普通の人間がこんなことをできるわけがない。

「わかった。話を聞く。一体なにが目的だ?」

「先ほども言いましたように、あなたの願い事を2つだけ叶えて差し上げましょう。ただし条件があります」

「命ならやらんぞ!」

俺は反射的に言った。こういう場合は大体命を取られるのがオチだ。しかし俺の考えとは違うことを悪魔は言った。

「命は必要ありません。願い事を叶える代わりに、あなたの欲望を叶えさせてもらいます」

「欲望を叶える?それは願い事じゃないのか?」

「実は願い事と欲望は違います。願い事は表面上。欲望は表面に出てこない本当の願い事。と言うべきでしょうか」

「それだと俺が得するだけでお前にはなんの利益がないんじゃないか?」

「そこらへんはお気になさらずに」

やはり俺は危ない予感がした。この悪魔とは関わらないほうがいいんじゃないか?しかし逃げるにしても道がない。どうするべきか...。

「どうやらまだ疑ってるようですね」

悪魔は俺に話しかけてきた。

「お前は俺の考えが読めるのか?」

「はい。下級悪魔といえどそれくらいはできます。そして疑うことはありません。私は欲望の悪魔なのです」

「欲望の悪魔?」

「はい。詳しいことは省きますが私は欲望の悪魔です。なのであなたの欲望を叶えることが私にとっての利益でもあります」

「ならなんでお前は...」

俺が話そうとすると悪魔は話を切った。

「すみません。どうやら時間のようです」

「は?時間?」

「大丈夫です。家には送りますよ。それと、欲望はあなたが願いを叶え終わりましたら叶えさせていただきますので」

「お、おい!ちょっとま...」


俺は家のベッドで目覚めた。

「夢か...ん?」

俺は違和感を感じた。そしてすぐに異変に気づく。右手に時計のようなものがついていた。

「なんだこれ。ん?外れねぇ!」

それはただの金属が丸くなったようなものにモニターがついていただけで、取り外しができなかった。そしてモニターには「2」という文字がはっきりと浮かび出ている。

「夢じゃ...なかったのか」

俺はベッドから起きてキッチンに行く。そこには誰もいなかった。家族はどこに行ったのか。それはすぐわかった。

「そういや朝早くからでかけて釣りに行くって言ってたな。全く。出かける前に祝いの一言くらいくれてもいいのにな」

俺は家族のことを思い出しながら右手の時計らしきものを見ると自分のことも思い出すことができた。

「そういや自分へのプレゼントとして時計を買いに行くんだったな。デパートまで自転車で30分。少しゆっくりしたら出かけるか」

俺は支度をしようとする。するとあることに気づく。鏡に時計らしきものが写っていなかったのだ。

「もしかしてこれって俺意外には見えないのか?」

俺はそんなことを考えながら支度を済ませてデパートに出かけた。


俺はデパートの2階の時計売り場にいた。ここにくるまでに時計らしきものが俺以外には見えないこともわかった。

「あの悪魔、本当に本物だったのか?」

俺はちゃっちゃと時計を買う。そのあとに屋上に行って左手に時計をつけた。両手になにかがついてると非常に違和感がある。

「この時計らしきもの...外れないかなぁ」

色々と試行錯誤したが外れる様子がない。俺は諦めて下を見た。このデパートは屋上を含めて3階しかなく、はたしてデパートと呼べるかわからないようなものだった。そのおかげで道路を歩いてる人が誰だかわかるほどに見やすかった。俺はまばらに走る車をぼんやりと見つめていた。すると見覚えのある車が見える。

「あれ?俺の車じゃないか?」

家族が乗って出かけた俺の車がデパートの横で信号待ちをしていた。どうやら釣りが終わって帰路についているようだ。

「...俺も帰るか」

そう言って屋上から離れようとした瞬間に気づきたくないものに気づいた。とてつもないスピードのトラックが小道から突っ込んできてるのがわかる。

「なんだあれ...」

俺は呆然としている。しかしそんなことしている暇はなかった。そのトラックは大通りに向かっている。ちょうどその先には家族の乗った車があった。

「あ、危ない!避けろ!」

届くはずもない言葉を屋上から叫ぶ。信号は青に変わらず、家族の車は相変わらず信号待ちを続けていた。

「止まれ!頼むから止まってくれ!」

俺がそう叫んだ瞬間、トラックが止まっていた。

「...え?」

止まっていたのはトラックだけじゃない。まばらに走る車。俺の買った時計すらも止まっていた。しかし右手の時計は止まってなく、「1」を映し出していた。

「まさか願い事が叶ったのか!?」

全てが止まっている空間。俺だけは動くことができた。

「と、とりあえず助けに行くぞ!」

俺は屋上から降りて人混みをかき分けてデパートから出ると家族の乗っている車に走った。ドアを開いて助けようとするが、ドアが開かない。

「クソッ!人は動かせるのにドアは動かせないのかよ!」

必死に開こうとするがビクともしない。

「開け!開いてくれ!」

俺が叫ぶとドアが開く。開いたドアから車内に向かって叫ぶ。

「大丈夫か!?」

もちろん時間は止まっている。誰も聞こえないことはわかっていたが、ずっと叫びながら家族を車内から外に連れ出していた。

「た、助かったのか?」

安全なところまで運んだあとに一息つく。ふと右手を見ると時計らしきものが消えていることに気づいた。

「願い事を2回叶え終わったのか...」

それに気づくと一番大事なことが頭の中に浮かんだ。

「時間を...戻せない...」

俺は絶望した。もう願い事は叶わない。どうしようもない。と思っていた矢先に目の前に人が現れる。

「お前は悪魔...」

悪魔は少し頭を下げたあと話しかけてきた。

「どうやら願い事は叶ったようですね。それではあなたの欲望を叶えさせてもらいます」

冷静に話しかけてくる悪魔に腹がたった。俺は強い口調で叫ぶ。

「今はそんな状況じゃないのがわかるだろ!」

「どういうことですか?あなたは願い事を叶え、私はあなたと約束した通りに欲望を答えるのみ。なにもおかしいところはありません」

「今は約束どころじゃない!元に戻してくれ!時間が止まった世界じゃ生きてられない!」

悪魔はそれを聞くとすこしニヤリとした。

「ご安心ください。あなたの欲望は「元に戻りたい」ですから」

悪魔に手をかざされる。俺は視界が暗転した。


俺は屋上にいた。右手には時計らしきものはない。

「元に...戻ったのか?」

俺は安心した。しかし安心は続くわけがなかった。

下のほうで大きな音が響く。俺はハッとして、絶望して、恐る恐る下を見た。

「ハハハ...ダメじゃないか...」

「どうでしょう。ご満足いただけましたか?」

後ろには角の生えたさっきの悪魔が微笑みながら話しかけてくる。

「ご利用ありがとうございました。おかげで下級悪魔から上級悪魔になることができました」

「なにがありがとうだ!全部お前のせいだ...全部お前の!こんなことしてなにになる!」

俺は悪魔に叫ぶ。悪魔は顔色一つ変えずに答える。

「あなたは何か勘違いをしていませんか?私は天使ではなく、悪魔です。欲望専門と言えど、人を殺すのもまた一つの仕事です」

「殺すことが仕事...?お前まさか...」

「はい。あのトラックは私が動かしたものです。それと私情ですが、私はあと一人殺せば私はさらに昇進ができます」

悪魔は俺に今までの微笑とは違う笑顔を見せた。俺は全てを悟った。

「殺すのか...俺を...」

「死に方は選べます。なにがいいですか?」

悪魔は俺に尋ねる。俺は無言のまま屋上の柵を越えて飛び降りた。

「ご利用ありがとうございました」

悪魔は角を触りながら嬉しそうに言った。

読んでくださりありがとうございました。どうでしたか?これは初作品なのでこれからも投稿していこうと思います。

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