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第一幕

 ピピピピピピピピピピピ・・・・・

けたたましく朝の訪れを目覚まし時計が告げる。午前六時三〇分。いつも通りの朝。

 「う・・・ん・・・・・」

 その音に反応し、いつものように目を覚ます。朝か・・・・そうつぶやき、手首に痛みを感じて顔をしかめる。そうか・・・昨日カッターで切ったんだっけ・・・と、そこで自殺をしようとしたことを思い出す。床には大きな血溜まりができた。もちろん、自分の血だ。これだけの血を流しておいて死なないなんて、人間というものは意外と丈夫だ。

 「絶対に死んだと思ったのになあ・・・・」

 そう、誰に言うでもなく呟く。

 「お前は死ねないよ、庚瑠莉香かのえるりか

 背後から急に声をかけられた。しかし不思議と驚きはしなかった。

 「誰?」

 振り向きながら訪ねる。ここは自宅の自分の部屋。自分以外他に誰かがいるわけがない。居る可能性があるとしたら親であるが違うというのは一目みてわかる。だとしたら・・・・どろぼう?にしてはそれらしくない・・・ほっかむりつけてないしヒゲ生えてないし・・・なにより・・・イケメンだし!は・・・もしかして

 「変質者・・・?」

 「誰が変質者だ!ったく・・・・俺は紅闇くおん。死に神だ」

 しにがみ・・・?しにがみ・・・・死に神って・・・あの死に神よね・・・

 「・・・・っぽくない」

 私は死に神、紅闇に思いっきり疑いの眼差しを向けて言い放った。

 「それはお前達人間が勝手に想像をして作り上げた固定観念だ。俺たち死に神からしてみたら、人間が思っているような、黒いローブにでかい鎌をもっているという姿の方が不自然だ」

 なるほど。そう言われてみれば説得力はあるかもしれない。確かに誰かが実際に見たというわけではない。例え見たことがある人がいたとしても、正確に覚えているというわけでもないし、まして人から人に伝言ゲームのように伝わっていったのだ。途中で尾ひれ背びれつけられて変わっていくのは当然である。人魚を見た!といって、綺麗な女性の下半身だけが魚のようであったとかいう話が広まった。だけど実際はただの岩場に乗り上がったジュゴンであったとか、まあそんな感じである。ふと、私はあることに気づいた。死に神が見える=私死?

 「なんだ、死ぬこと成功してるじゃん!」

 「だからお前は死ねないと言っただろ。ニワトリなみの記憶力だな。庚瑠莉香」

 一瞬抱いた希望を即座に壊された。しかもニワトリなみの記憶力って・・・はっきり言って失礼極まりない言い方である。傷ついた。なんなんだこいつは・・・!それに・・・

 「あんた、なんで私の名前知ってるのよ」

 死に神だからってなんでも知っているということはないはずだ。そして私も名乗った記憶はない

 「死に神だからだ」

 ・・・・私が否定した事をさらに否定してくれた・・・なんか・・・こいつ嫌いだ。

 「で、なんで私は死ねないわけ?」

 当然の疑問をぶつける。人間いつかは必ず死ぬものだ。遅かれ早かれ必ず死というものは訪れる。生きているもの全てにあるものだ。例えそれを望んでいようがいまいが、必ず。それなのに私だけ死ぬことができないなんて事はありえない。自殺だから死ねない?そんなわけはない。もし死ねないなら、死因が自殺という事はないのだから。なぜか紅闇は黙っているっていうか目が泳いでいる。少しばかり落ち着きがなくなったような気がする。これは明らかに動揺している。なにか、ものすごく大変な理由でもあるのだろうか・・・?

そんなことを考えていると、やがて紅闇はゆっくりと、静かに話始めた。

 「いや・・・まあ・・・あれだ・・・・お前の寿命を・・・書き忘れた・・・」

 「はあ?」

 「いや、だからな・・・・人間の誕生日ってのは天使が決めて、書類に書くわけだ。で、その書類を冥界で受け取って、死に神がその人間の寿命を書くことになってるんだが・・・・その時・・・お前の寿命を書き忘れた・・・」

 「誰が?」

 「俺が・・・・」

 「・・・・それで?」

 「だから・・・お前は死ねない」

 なんだかよくわからないがとにかく私は死ねないと。そして、私が死ねないのはこいつのせい。人間って寿命じゃなくても死ぬものだと思ってたけどそういうわけではないらしい。まあ・・・とりあえず・・・

 「私の寿命返せ!死ねないとかふざけないでよ!こんな退屈な世界で延々と生きていけっていうの?!」

 「まあ、人間誰でも間違いはある」

 「あんたは人間じゃないでしょ!」

 完全に開き直りモードに入っている。最悪だ・・・・・・

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