アタシの彼氏
前の彼氏と別れて、だいぶ時間たったわね。もう彼氏なんていらないなんて思ってさ、本当は欲しかったのに、強がっちゃってバカだよね。でも、そんなアタシにもやっと新しい彼氏ができた。前の奴とは全然違って、とってもかわいいんだ。
お前の恋バナには興味がないですって!? 今までずっとあんたの息子の話、アタシが聞いてあげてたんだから、今日くらいちょっと付き合いなさい。
アタシの彼氏とってもかわいいの。朝起きるとね、耳元で「起きてよ」
なんてささやいてくれるのよ。しかもその声がとろけるようなやさしい声なのよ。彼はいつも早起きさん。時々すっごく早い時間に起きてくるけど、甘い声を聞いた途端何もかも許せるような気になっちゃうのよね。
で、彼はいつも二言目にこういうの。「なぁ、俺の朝食作って」
って。甘ったれさんなんだから。どうせアタシはレトルト食品しか作れないけど、それでも彼は喜んで食べてくれるわ。まるで誰かさんとは大違いよ。その食べっぷりを見てると、早起きして作ったかいがあったと思えるわ。
彼が一番かわいいのはアタシが一人でショッピングに出かける時。彼ったら、必ず玄関までやってきてくれるの。「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
この会話、絶対に欠かすことはないわ。だってアタシたちラブラブなんですもの。
夜になるとね……。ねぇそんな顔してアタシの顔見ないでよ。大丈夫よ、真昼間からきわどい話をするほどアタシはバカじゃないわよ。
夜になるとね、彼はアタシのそばに寄ってきて……。あぁ、もううるさいわね。大事なところなんだから、静かに聞いてよ。彼がアタシの布団の中に入ってくるのよ。嬉しそうに。彼は「俺のこと撫でてくれ」
って要求するわ。それでちゃんとアタシが撫でてあげると、今度は彼が、真っ黒いその尻尾でアタシを撫でてくれるのよ。
また文句を言いたそうな顔してるわね。どうしたのよ。蚤? それくらいいじゃない。猫アレルギー? ご愁傷さま、アタシ彼を追い出そうなんて絶対に思わないわ。そんなに嫌なら、あんたが出ていけばいいじゃない。
この妻の告白を聞いた後、夫は離婚をする決心をした。