お節介なマミー
「ただいま」
すっかり街が夕日にほんのりと照らされる中、未来は自宅の玄関のドアノブを引く。ドアノブを開いた彼は玄関で靴を脱ぐ。
「おかえりなさい未来」
「ただいま母さん」
リビングから顔を覗かせたのは未来の母親、芹沢彩乃。彩乃はパタパタと未来に駆け寄って彼の制服を手ではたく。
「今日も学校楽しかった? 怪我はない?」
「……うん。あともう何度目か分かんないけど流石にここまでしなくていいって」
未来は顔を背けてため息をつく。これでも冷たい家庭よりは全然マシだろうが、構われる側の気持ちも知って欲しいものだ。
「今日もお父さんは仕事で遅いから……ってあれ? 未来、その袋どうしたの?」
彩乃は未来が携えている紙袋に気づいたらしい。
「これは、その……」
「お友達から?」
彩乃の言葉に未来は一瞬言葉を詰まらせるが、すぐに言葉を返す。
「うん。そんなとこ」
未来の言葉に彩乃は顔を輝かす。
「あら良かったじゃない! 誰から? あ、和樹君か美鈴ちゃんからかしら?」
和樹たちは中学の頃から未来の家を訪問しているため、未来の両親とも顔馴染みだ。
「あ、いや、えーと……」
茶髪を靡かせる隣席の存在が未来の脳裏に浮かぶ。未来は思考を巡らせるものの、本人がいないなら別に言っても構わないだろう。
「いや、別の友達」
別の友達。隣席である朝陽をそう捉えた発言。特段仲が良いわけではないが、言う分には本人にも迷惑は掛からないだろう。それに友達という発言自体、何か悪い意味を持つ言葉ではない。
「え! 新しい友達から!? 未来にも和樹君達以外にようやく……!」
「うっさい。それに俺は友達を作りたくないわけじゃないし」
このまま長居しても母親のペースに飲まれるだけだ。未来は自室へ足を運ばせる。背を向けた彼の様子に微笑みつつも、彩乃は彼を呼び止める。
「ねえ未来」
「ん?」
未来は振り返る。彼の目には優しい視線を送る母親の姿が映った。
「それをくれた子は女の子?」
母親の言葉に未来は恥ずかしがることもなく、ただ淡々と答える。
「そうだけど、何か?」
未来の様子にクスッと笑いながら、彩乃は歩み寄って彼の頭を優しく撫でる。
「ちゃんとお礼を言うのよ。何かの縁かもしれないし」
未来はじっと母親を見つめる。
(お礼に対してお礼か)
未来は母親の手をどかす。
「何かの縁っていうか、同じクラスのやつってだけだよ」
「充分な縁じゃない。何百人もいる中で同じクラスになれるなんて素晴らしいことよ?」
「母さんが思ってるような仲じゃないって」
きっと色事か何かと勘違いしている。未来は再び母親に背を向けて歩き出す。今度は彩乃も呼び止める真似はしないで、ただただ息子の背中を優しく見送る。
2階へ続く階段に少しの衝撃が続く。
キーとドアが開き、部屋に体を入れた未来はドアをすぐさま引く。彼の姿が彩乃の視界から消えると同時に、ガチャリとドアが閉まる音が、家の中で静かに溶け込んだ。
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