友人達との朝
チャイムが鳴り響く中、多数の生徒達がゾロゾロと廊下を通り、その中から1年A組の教室に入ってくる者もちらほら。
男子達はガン見というわけではないものの、やはり未来の隣に座る朝陽に視線を送っている。確かに窓から差し込む光に包まれた朝陽は、まさに絵になっている。
そんな中、朝陽と未来の前方の席に2人組の男女がカバンを下ろす。
「ヤッホー未来! 調子どう?」
「別に」
「ホント相変わらずって感じだな」
「特段何かある訳じゃないしな」
中学の頃からの知り合いである溝呂木美鈴と高山和樹。
2人とも寡黙なタイプの未来とは対照的に、朗らかで陽気な性格。そんな2人は中学の頃から未来と交流を続けていて、時折3人で遊ぶことも。
ちなみに美鈴と和樹は幼稚園の頃からの幼馴染同士であり、絶賛リア充満喫中である。
相変わらずと言われた未来の隣に座る朝陽も、日頃のように沈黙を貫いている。
「おはよ朝倉さん!」
「……おはようございます」
快活な様子で声をかけた美鈴の言葉にも涼しい様子で朝陽は返す。その様子を見守る隣の未来は、毎朝声をかける美鈴に健気さを感じていた。そして目の前で同じように見守る和樹の肩を叩いて耳を近づけさせる。
「この1ヶ月ずっとこれだぞ。お前からもなんか朝倉に言ってやったらどうだ?」
極力声を潜める未来に、彼の頭を片手でボサボサさせながら苦笑いを浮かべる和樹。
「別に俺が口出すことじゃないだろ。それに美鈴に言われてるんだよ、『自分でなんとかする!』って」
「なんとかなんのかあれ」
しかめっ面で和樹の手をどかせながら、未来は呆れ顔を浮かべる。和樹は腕を組んで美鈴の笑顔をじっと見つめる。
「なんとかしちゃうのが美鈴だ。お前もそれは知ってる事だろ?」
「まあ、それはな」
未来自身、中学時代にはその美鈴の明るさがあったからこそ、こうやって繋がりが生まれた。
「ま、俺の彼女だから当然だけどな!」
「……別にお前の手柄じゃないけどな」
「うるせぇ彼女無し野郎」
「余計なお世話だ」
誇らしげに胸を張る和樹の姿に未来はうんざりした様子を見せるが内心、和樹の明るさは見ていて気持ちが良い。
「それよりお前こそ朝倉さんとは馴染んでないだろ、隣の席なのに」
「馴染むつもりがないからな」
淡々と答える未来の言葉に和樹はその一貫性に、もはや尊敬の意を覚える。
だが彼の他人への興味の希薄さは、美鈴を彼女に持つ和樹にとってこれほど安心出来るものはない。だからこそ3人で遊ぶことにも何の躊躇いも覚えないのだ。
「ホントその辺は変わらないよな」
「あくまで席替えで隣になった、それだけだ」
「左様ですか。俺は美鈴と隣になれたから構わんが」
そんな男子2人が会話をする中、美鈴は朝陽に笑顔で話し続けている。
「ねね、朝倉さん! 朝倉さんって1日どれくらい勉強してるの? 前回のテスト凄かったじゃん!」
「……そうですね、暇さえあれば出来るだけ時間を費やしていると思います」
朝陽の言葉に美鈴は感嘆の表情を浮かべる。
「やっぱそうだよね! みんなはさぁ、『朝倉さんは天才だから成績が良い』って言ってたけど、今もこうやってちゃんと勉強してるもんね!」
美鈴の言葉に朝陽の動きが一瞬固まる。そんな朝陽の様子に気づいていない美鈴はさらに笑顔を輝かせる。
「みんなはちゃんとそういうのに気づくべきだよね! 朝倉さんは、『努力の天才』だって!」
その言葉に、固まっていた朝陽の様子が少し変化する。普段は涼しい表情を浮かべる彼女の顔に、ほんのり赤みが頬にさす。ぎゅっと結ばれた唇は少しだけ緩んでいた。
相変わらず1人語りをする美鈴はそれに全く気づいていないが、未来と和樹は気づいていた。
「……初めてじゃね? 朝倉さんがあんな顔するの」
和樹の言葉は朝陽の上っ面の笑顔ではなく、本当の微笑を指しているのだろう。未来は反応を示さなかったが、朝陽の笑顔に見入っていた。
(朝倉も嬉しいんだな、自分の努力を見てもらえるのって)
明るい光に照らされる、朝陽の心からの微笑と美鈴の満面の笑み。2人の対照的な表情が、未来と和樹の頭にほんのり印象を残した。
この度もご覧いただきありがとうございます!
是非ブックマークに高評価や感想など、ドシドシお願いします!




