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ファザーの手とお礼の中身

 未来は自分の部屋のベッドに腰を下ろす。未来が作った沈みがシーツにシワを生む。


 「今日は朝倉からもらったこれで小腹を黙らせるか」


 帰り道からここまでずっと携えていた紙袋。隣席の朝陽がくれたものはきっと何かしらの食品だろう。


 「よし。それじゃあ中身を確認と……」


 少しお腹が空いていたため、紙袋へ手を伸ばすスピードがやや早い。膝の上に置いたそれの中に手を突っ込もうとしたその時、彼のズボンのポケットに少しの振動とピコンという軽やかな音が伝わる。


 未来はスマホをポケットから取り出し、差出人を確認する。


 「和樹か」


 差出人の名前を確認し、メッセージ内容を確認する。


 【助けてくれぇい。腹が減った】


 いつも通りのくだらない、和樹らしい言葉。未来は呆れつつも律儀に返信する。


 【知るか。愛しの彼女さんにでも何か頼んでおけ】

 

 すぐさま返信が来る。 


 【イヤイヤ。それは情けないじゃん? だから清く正しい友人であるお前から恵みを……】

 【とりあえず寝とけ。ウチには何もないぞ】


 文面こそ未来の言葉はぶっきらぼうだが、メッセージを送信するその顔には仄かに微笑みが浮かんでいる。


 そんな友人との変わらぬやり取りをする中、未来の部屋のドアをノックする音が彼の耳に届く。そして続けざまに男性の声が。


 「未来、いるか?」

 「うん、いるよ父さん」


 未来はベッドにスマホを置き、ドアが開かれる音と共に顔を覗かせた人物に視線を送る。

 未来の父親こと芹沢光(せりざわひかる)。彼は首から垂らすネクタイを揺らし、スーツをその身に纏っている。


 「あれ、今日も仕事で遅いって母さんから聞いてたんだけど」


 光はネクタイに手をかけて、緩めながら口を開く。


 「今日は早めに切り上げることが出来たんでな」

 「そうなんだ」


 未来は父親に視線を送り続ける。一方光は未来が膝に乗せている紙袋に目を向ける。


 「ああ、母さんが言ってたのはそれか」


 光は未来の部屋に入り込み、息子の前まで歩み寄る。未来が見上げたその時、光は未来の頭に手を乗せ、優しく撫でる。


 「聞いたぞ。女の子から貰ったんだってな」

 「……間違ってはないけどそこはメインじゃない」


 未来はしかめっ面で父親の手を払いのける。


 「あの未来が女の子からプレゼントを貰うなんてな。父さん嬉しいよ」

 「うるさい。とっとと酒でも飲んでてくれ」

 「ははは。おつまみ類だったら持ってきてくれよ」


 冗談半分でそう言った光はそれ以上詮索はせず、片手を軽く振りながら部屋を出ていく。


 未来は父親の背中を静かに見送ったあと、スマホを手に取って和樹とのチャット画面を開く。先程未来の送ったメッセージには、「既読」の2文字と涙目の顔文字が添えられている。

 

 今日はこれ以上会話が続かないだろう。和樹から来るメッセージに流れを任せることにした未来は、スマホを充電ケーブルに繋いでお目当ての物に手を伸ばす。今日の朝、学校で朝陽から受け取ったブツだ。


 彼女曰く感謝のお礼品らしいがこれが原因で両親に軽く揶揄われる羽目になった。もちろん馬鹿正直に母親の質問に答えた自分にも落ち度があるだろう。そんなことを頭の片隅に置いて未来は遂に袋の中身を確認する。


 「さあ、朝倉のお気持ちの品は何かな」


 彼はそう呟いて袋の中に手を突っ込む。手に掴まれて出てきたものは……


 「これは……イカの干物と、梅干し?」


 薄いパックに、赤い果肉が幾つか入った瓶。パック側にはイカの可愛らしいイラストが。


 「酒飲みのセンスじゃね? これ」


 未来は少しの困惑を込めて呟く。彼の呟きは静かに自室で響いた。



 この度もご覧いただきありがとうございます! 

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