表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
離岸流  作者: 天ノ風カイト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/6

全ては僕らの罪となる

 新谷君の言葉で、それぞれが、それぞれの家族に事の次第を伝えなくてはならないのを思い出した時に、それまでとは違う恐怖が僕の中を支配しました。

(家族に!?・・・・太田君が溺れて行方不明だって伝える!?)

その思いは、全員同じだったでしょう。

僕らは、砂浜に置いてた、それぞれの鞄が置いてた場所に走って戻りました。

それから、互いに自分の携帯電話を手にした僕らは、互いに目を会わせました。

後は、携帯電話の画面の通話の発信ボタンを押すだけなのに、(みな)躊躇(ちゅうちょ)してしまったのです。

その時、先に意を決した角村君が「一緒に掛けよう・・・」と言いました。

僕らは無言で頷きました。

そして、それぞれが、それぞれの家族に電話を掛けたのです・・・。


僕も含めた皆が、家族に電話で責められました。

それは何もかも当然でした。

何一つ言い訳もできないだけの、取り返しのつかない事をしたのですから・・・。

でも、後の方は「何があっても、そこに行くから待ってなさい!絶対に海に入らないで!」と・・・僕も、皆も、そう言われてるのが分かりました。


 皆が家族との電話を切った後。

僕は「太田の家族へは・・・僕が連絡する」と言いました。 

僕は僕なりに、できる限りの責任を取る思いだったのです。



 僕は太田君のお母さんに謝罪してる内に、泣いてました。

泣いてしまう自分が卑怯だと思えましたが、そう思う程に、また泣いてしまうのです・・・。

僕から、事の次第と謝罪を聞いた太田君のお母さんは「いま直ぐ、あなた達の所まで行く!』と震えた声で言って電話を切りました。

僕達が招いた失態でしたが、僕はその責任の一つを取れた事に、少しホッとしました。

そんな感情は、自分でも全く不謹慎だと思ってるのに、そうだったのです・・・。


それから間も無くでした。

水色の機体の側面に、斜めに赤いラインが入った警察の防災ヘリコプターが来るのが見えたのは。


 この時で12時ぐらいでしたから・・・日没まで、あと7時間あるかどうかぐらいだったと思います。


ヘリコプターが大きな音を立てて海面に近付いたのを見た僕らは、それに向かって大きく手を振って、通報した自分達の場所を示した後に、太田君が見えなくなった方向を指差しました。

僕らからも、ヘリコプターに乗って身を乗り出してるダイバーの姿が見えました。

ダイバーは僕らに大きく手を振って応えると、パイロットらと話し合ってる様子でした。

それから20分ぐらい、ヘリコプターは太田君を探して河口の周辺や、僕らが泳いでた沖の上を旋回したりしてました。

すると遠くからサイレンが聞こえて来ました。

見ると、それは1台のパトカーでした。

そのずっと向こうの海水浴場の駐車場辺りには、消防車と救急車も見えました。

パトカーは、砂浜をこちらに向かって走って来てました。

海の方を見ると、僕らが泳いでたずっと沖で、暫く静止飛行(ホバリング)してたヘリコプターが、徐々に高度を落とし海面に近付くと、潜水用のタンクを背負ったダイバーが海面に飛び込みました。

ヘリコプターの回転翼(プロペラ)が巻き起こす強い風による白く毛羽立った波が水煙を上げる海面で、ダイバーはシュノーケルを使って海中を覗いてました。

それからダイバーがホバリングしてるヘリコプターを見上げると、手で盛んに合図を送りました。

それを見てるヘリコプターのドアから身を乗り出してる人が、パイロットらと何かを話してました。

すると、ヘリコプターからオレンジ色の、何かベルトの様な物が落とされました。

ダイバーはそれを掴むと、海中へと潜って行きました。

すると直ぐに、ヘリコプターから吊り上げ用のワイヤーが海面近くまで下ろされました。

そうして、ダイバーは何分か潜ったままになっていました。

遠くに聞こえてたパトカーのサイレンは、ヘリコプターの騒音と同じぐらいハッキリ聞こえてきましたが、僕達はヘリコプターの方を見て居ました。

海ではダイバーが海面に上がって来ました。

ダイバーがヘリコプターの方に合図を送ると、ヘリコプターからは吊り上げワイヤーが更に伸ばされ、その先に付いたフックが海面に着きました。

ダイバーがフックを掴み合図を送ると、ワイヤーは更に伸ばされ、ダイバーはワイヤーの先のフックを持ったまま、また海中へと潜って行きました。

それから数分の間、僕らは黙って待って居ると、ダイバーが海面に現れました。

ダイバーはヘリコプターに向かって合図を送ると、ヘリコプターのワイヤーが巻き上げられました。


そして・・・・海面に、1人の身体が浮かび上がって来ました。


それは遠目でも、履いてる海水パンツの色や、体型などで太田君と分かる姿でした。

それは『太田は溺れて死んでた』と、僕らが確信した瞬間でした。


僕達の近くで、車のドアが明け閉めされる音が続けてしました。

パトカーで来た2人の警察官が、僕達の方へと向かって歩いて来たのです。


 厳密には、専門家が死亡を確認した時が死んだ時になりますが・・・・僕らが太田君が死んだと思ったのは、あの時でした。

『死んでるだろう』というのと『死んでる』の違いが、こうまで違うものなのかと思い知った瞬間であり。

それは『皆が期待してた絶望が叶った瞬間』とも、言えたかのも知れません。

僕達が一番心配してたのは多分。

『このまま太田の死体が上がらなかったらどうしょう』と、思ってたのだと思います・・・。


太田君の身体はヘリコプターに吊られた後に、ヘリコプターに収用されました。

それから、続けて、ダイバーも引き上げられて、ヘリコプターに乗り込みました。

するとヘリコプターはの騒音と風波(かざなみ)を増しながら徐々に高度を上げると、呆気ない程そのまま飛び去ってしまったのです・・・・。


空を見上げヘリコプターを見送ってた僕達でしたが、直ぐにでも太田君の元へ行かなくてはと思いました。

しかし僕達は、警察官からの事情聴取に応じなければならなかったのです。

1人の警察官が「君らが太田さんの友人で間違い無いですか?」と言いました。

僕らは、無言で頷きましたが、その後に角村君が「そうです。僕らが太田君と一緒に来ました」と答えました。


僕達には、自分達がしてしまった事を、詳細に答える責任が課せられました。

その中でも僕と角村君の責任は特に重かったのは間違いありませんでした。

僕達が事情聴取を受けて居ると、もう1台のパトカーが、サイレンは鳴らさずに赤色灯だけを点滅させながら、砂浜をゆっくりと走って近付いて来ました。

僕達がそこで事情を説明し終えるのには、1時間ほども掛かりました。

警察官と話してる間に、僕達には親からの電話が掛かって来ました。

僕達の親は、海水浴場の駐車場まで来たのですが、警察官の事情聴取が終わるまでは、そこで待つように言われてると言ってました。

パトカーは四輪駆動車らしく砂浜に入れましたが、僕達の親の車はそうでないのもあったと思うので、その場合は、ここまで歩いて来るか、僕達が行くかしか無かったので、きっとそんな理由もあって、警察官は僕達の親を駐車場に留めたのだと思います。


 話を聞き終えた警察官は「事情は分かりましたので。後は、あっちまで戻るから、全員パトカーに乗って下さい」と、僕達を海水浴場の駐車場の方まで連れて行くと言いました。

僕ら4人は2台のパトカーに分乗すると、海水浴場の駐車場へと運ばれて行きました。

乗せられたパトカーの中では、助手席の警察官が、僕達を駐車場へと運んでると無線で知らせてました。

すると無線には、僕達の親が駐車場で待ってるので、そちらに行くようにとの会話が聞こえました。

僕と一緒のパトカーに乗ってた角村君は「親が、待ってるのかぁー・・・」と、溜め息のように言いました。

その気持ちは僕も同じでした。

きっと、もう1台のパトカーに乗ってる新谷君と西崎君も、同じ思いだったと思います。


駐車場には、僕達が乗ってるパトカーの他にもう1台のパトカーと、それと救急車が1台。消防車が1台に消防指揮車が1台が停められてました。

周囲には、警察官が数人と、10人近い消防隊員が居ました。

そして更に多かったのは、僕達が起こした事故に興味を持った大勢の野次馬でした・・・。


パトカーから降りると、僕達の親が来て居ました。

厳しい表情の親も居れば、泣きそうな親も居ました。

僕を待ってたのは母でした。

その表情は強張ってて、僕は直視出来ませんでした。

僕は恐る恐る、上目遣いで太田君のお母さんの姿を探しました・・・。

しかし、太田君のお母さんは、見当たりません。

ヘリコプターで運ばれた息子を追って、ここにはもう居なかったのです。

僕は内心、ホッとし、うつ向きました。

それから、どうして良いか分からず立ち尽くしてる僕の元に、母が駆け寄り立ち止まったので、僕はおずおずと顔を上げました。

僕と目があった母は、僕の頬を打ちました。

その力は特別強い訳では無かったのに、僕の頬は酷く傷みました。

母を見ると、目に涙を浮かべてました。

『取り返しのつかない、酷い事をしたのだ』との想いが、僕の中に溢れました。

気が付けば、僕は涙を流してました・・・。

僕は、母の目を見れませんでした。

すると突然、母は、そんな僕を抱きしめてくれました。

そして、耳元で・・・とても小さない声で「無事で・・・良かった・・・・」と、言ってくれました。

それは、太田君のお母さんの前では絶対に言えない言葉でした。

それが痛い程に分かった僕は「ごめん・・・・」と、涙声で言った後「ごめんなさいっ・・・!」と、叫ぶようにして誤りました。

何度も何度も「ごめんなさい・・」と、言ってました・・・・。


 つ づ く



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ