第一話「終わりとは、始まりの終着点である。」
この世界は、理不尽で不条理で、不明瞭だ。
探っても、探っても、眼の前にあるのは、透明感のない霧のみ。可視できる範囲は、腕一つ分を境に、バタッと、不明瞭になる。
どこに自分がいるのか、君はどこにいるのか。
薄気味悪い空気を吸いながら、二酸化炭素を増大させて、より悪化させて、そのまま吐き出す。
深呼吸をしても、心の唸りは止まらない。
それどころか、速くなっていた。
いつしか、胸の鼓動が、時計の刻むリズムを超える。
律動的な、時計の音と、不定期な心音。
俺は、どうしてここにいて、どうして生きている。
なんで、生まれたんだ。なぜ、なぜ。
生命を食して生きながらえる生物、人間。
他人を自己保身の犠牲にする、愚かな生物。
知能は、優れた生物だという、証などではない。
人間は、他生物よりも優秀ではない。
人はいつも慢心し、油断する。
自分は無敵だと、神に愛されてると、信じる。
思い上がるな。勘違いするな。弱い心に漬け込むな。
心に刻め。お前は、この世界で、最も衰えた生物なのだと。
俺は人間。
生物史上、最も愚かで、慢心で、貪欲な人間の子供である。
そして最も、真実に、飢えている。