時計のセンス
男は動けない俺を抱え、どこかへ歩き始めた。
「あのぉ、家反対側なんすけど、、、」
「これから基地へ行く」
ん?基地?
「基地ってなんすか?」
「俺たちの隠れ家だ」
「え、遅くなりますか?」
「なんだ?予定があるのか?」
「お母さんに怒られるんですよ」
「はっはっは!どんな強者でも母親には敵わないからな!」
この人声でかいなぁ。
あれ?今気づいたけど安そうな時計してんなぁ。
「時計、かっこいいですね」
「そうだろ?これは人生で初めて買った時計だ。初任給でな」
物を大事にする人なんだな。
「なんか仕事してるんですか?」
「俺は、俺たちは、日本を守っている」
警察か何かか?
「あはは、楽しそうですね」
「俺たちは命をかけて戦ってるんだ」
戦うって何とだ?
「だから給料が弾むんだイッヒッヒ」
下品な笑いだな。
「その腕時計はどのくらいしたんですか?」
予想金額:5000円
どうせそんな高くないだろ。
「500だ」
おいおい嘘だろ?予想より低いじゃねぇか!
「500円でそんなかっこいいってコスパ最強ですね!」
男はニヤリと笑い、言った。
「500万だ」
「え、500万?」
「500万」
「え?」
「ん?」
わーお、まさかの1000倍?!
だとしたらダサすぎやしませんか?
「かっこいいですね、、、」
「そうだろ?よし!ついたぞ」
ん?なんもないぞ?多分これはこの人なりの渾身のボケってことか?
「いやいや何にもないじゃないですか!」
俺はしょうがなくツッコミを入れてあげた。
すると
「下を見てみろ」
下?マンホールしかないぞ?
「この下って下水道ですよね?もしかしてあんたの組織のボスネズミとかなんすか?」
俺は得意のジョークで少しこの人をバカにしてみる。
「君俺のことバカにしてるね?見てろよ?」
すると男は俺を抱えたまま、マンホールの蓋を開け、勢いよく飛び込む。
「うわあああああああ!」
ふと思った、今なんでマンホールの中にいるんだ?




