フォーメーションA
この状況で笑顔を保ち、スーパーパワーでこのクマをぶっ倒す。それがヒーロー漫画の主人公。
これはヒーロー漫画でもないし、俺は主人公じゃない!主人公補正なんてついてない。
気張っていけ、ちひろ!いや、スコーピオン!
【シエルから連絡があった。どうしたスコーピオン!】
「ゴリオンさん、接触しました」
【まさか】
「はい、そのまさかです」
【待ってろ今行く!】
「大丈夫です、作りました。こいつに勝つ方程式!」
「ヴぉおおお!」
左の大振り!避けろ!
グサっ
「ああああ!」
避けきれなかった!
熊の爪はちひろの右足のふくらはぎに刺さっていた。
くそ、血が、、、
「どけ!」
俺は熊を全力で振り解く。
【おい!大丈夫か?】
「・・・」
【返事をしろ!ここで死なれちゃ、、、】
「大丈夫です。今はアドレナリンで痛みが少ないので、、、」
正直クソ痛い、でも実際今動けてはいる!アドレナリンのおかげだろう。これが切れたらだめだ、すぐ動けなくなる!
「来い!ノロマ熊!」
俺は右足を引きずり、できるだけ早く遠くに逃げる。
ドンドンドンドン
熊は木々を倒しながら迫り来る。
俺はポケットから指輪を取り出し、爪で電源をオンにする。それを地面に投げる。
「シエルさん?」
『はい、行動パターンを解析した結果、、、熊は指輪を踏むでしょう』
「オッケーシエルさん!」
『指輪まであと20m、10m、5m、4、3、2、1』
「あばよ、ノロマ」
ビリビリビリビリ
熊の体に50万ボルトの電流が流れる。
よし!やったか?
「ヴォ、ヴぉおおおおお!」
おいおいマジかよ。
50万だぞ?ハッ化け物が!でもそりゃそうだよな、ゴム弾でも立ってられるんだ。
「こっちも策が一個でお前に勝とうなんて考えてねぇよ!」
さっき木にブッ刺しておいたワスプインジェクターナイフのCo2発射ボタンを押す。
「残りのCo2噴射!」
プシュー
木は空気の圧に耐え切れず、ナイフを刺したところから横に倒れていく。
「逃げたほうがいいぞ!ま、無理か」
ドン!!
熊は木の下敷きとなる。
「はぁはぁはぁ」
ピキン!
「クハッ」
痛い!一気に来た!そうだ、アドレナリンで動けてただけだ。
「早く、、、たかとくんのところへ、、、」
まずい、意識が、、、
「ヴぉおおおおお!」
は?嘘だろ?
薄れていく意識の中、血だらけの熊がこっちに迫ってくるのが見えた。
「シエ、、、ルさん、、、」
あぁ、メガネがどっかいっちゃったや、、、
死なないで!
え?美久?どうしてここに?
生きて!
ふっ、無理だよもう。
意識を保って!
出血が多すぎる、、、もうだめだ、、、
その時、美久の後ろで熊が何者かに倒されたのが見えた。
「大丈夫かスコーピオン!」
ゴリオンさんまで、、、
「これが走馬灯、、、」
「何言ってやがる!」
「え・・・」
「とりあえず止血するぞ!」
ゴリオンさんは後ろのリュックから医療キットを取り出す。
これは現実か。
あれ?左手に何か・・・?
「ばぶばぶ」
「赤ちゃん・・・?」
「母親は最後までこいつを抱きしめていたんだろうな」
・・・
「もう息はねぇのになかなか離してくれなかったよ」
ゴリオンさんの目には怒り、悲しみ、哀れみ、動揺などたくさんの感情があるように見えた。
ん?動揺・・・?
ゴリオンさんは辺りを見渡す。
「おい、あの子どもは・・・?」
「は・・・」
俺はその時一気に冷や汗をかいた。
「歩けるか?」
「無理です」
もうアドレナリンは切れた。歩ける訳がない。
「わかった、乗れ」
ゴリオンさんは赤ちゃんを手で抱っこしながら、俺をおんぶしようとする。カイリキーか!と言うツッコミは心のうちにしまっておく。
「俺はカイリキーじゃないぞ、お前がつかまれ」
あ・・・先に言っちゃった。
「ごめんなさい」
「何がだ?」
「あ、いやなんでもないです」
赤ちゃん、ゴリオンさん、俺、フォーメーションAの完成だ。




