5話 メイン火力が不在でも、目的を成すことは可能ということ
ウォークライさんを仲間に引き込んだが、状況が明解に好転したわけではない。
ありていにいえば、あまり状況に変化はない。
事情を知っている仲間が一人増えた、に過ぎない。
なぜなら、私とウォーさんは、この半年間の冒険中、実際そんなに仲良しこよしではないのだ。戦闘の最前線で突っ込んでいく私と、ウォークライさんであるから、常に会話はしていた。でもそれはあくまで戦闘上における連携や、行動の順序の話であり、要は仕事に関しての話題ばかりだった。日常的に飯に行ったり、お酒を飲みにいったりする仲ではない。
嫌いあっているような、積極的な感情のやりとりをしているわけではないが、ついに二人っきりで食事に行くようなことはなかった。どちらかといえば、それは癪ではあるが勇者との方が遥かに多い。
私が殺害される数時間前の状況下で、普段はあまり交流のない相手とつるんで行動している光景は、ミャーさんに警戒を抱かせる。
だから私は最終的に、ウォーさんにはいつも通り過ごすことをお願いした。
「いざというとき、ウォーさんがすべきと思ったことを、してほしい。私のためにした方がいい、と思ったことを。今このときウォーさん自身がやるべきだと思ったことを。これが作戦の全容。理解した?」
「その場その場での、行き当たりばったり、ということだな。了承した」
私の殺害計画に関しては、ウォーさんはほとんど情報を持っていなかった。指示待ち人間状態。
「貴殿の殺害が決まった、と先日伝えられた。勇者とミャー。両名が主導。離反の場合は、パーティーからの追放及び暗に家族の安否保障がなくなることを通達。脅迫である。しかしそれに従ったことは我。天秤にかけた。家族と仲間。申し訳ない」
「他の皆も、従ったんだね」
「各々理由があると察するに値する」
「ちなみに魔王討伐はどうするの? 私いなくちゃ魔王を滅することができたとしても、24時間連続耐久戦闘ぐらいになるんじゃない」
「それは同意。ゆえに問うた。貴殿不在で、どう魔王を倒すのか、納得できる解がほしい、と。超長時間労働の果てに、精魂尽き果てるまで叩かせて廃人になるまでやらせるのか、と」
メンバー全員のメンタルが擦り切れるまで頑張って粘って。高額医療品を使いまくって資金難になるまで粘れば、魔王討伐も成すかもしれない。結果、それを成したメンバー全員の、その後の人生が、まだ年齢も若い彼ら彼女らが、介護の名のもと、誰かに常に依存している日常になることは、とてもつらい。
「奴らの返事は?」
「考慮しなくてもよい、と返答」
私はさすがに眉をひそめる。なんだそれは?
「考慮って、それは考える必要ない、と? 廃人になるまで戦い続けろってこと?」
「それ以上の質問は受け付けられなかった。ただ決定事項である、とだけ伝えられた。ただ」
「ただ?」
「保障する、ともいわれた。我らの今後の人生において、支障をきたすような事態になることはない、と」
私がいなくても、魔王討伐は、成るということ? 安全になる、と?
パーティーの主力火力を担っていた矛がいないのに?
必要ない、ということ? 攻撃がいらない。攻撃しない?
和解?
わからない。今の情報では、何を考えても妄想の域をでない。一旦、これは保留にするしかない。
聞くしかないのだ。知っている奴に。
知っている奴の、身体と心に、直接訊くしかない。