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すたーと・おーばー・りべんじゃー  作者: 小柳和也
1章 真っ当かつ、正しい立場からの理由があろうと、絶対に許せないという心を行動に表すだけの話
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3話 心を整理して、やるべきことを明確にして、元仲間を攻略しよう

 部屋でくつろいでいるミャーさんのもとへ突っ込んで、殺害するだけなら簡単だ。


 私は、魔物討伐を生業としていた攻略パーティーの最大火力を担っていた。

 防御準備をしていない術師相手なら、真正面から突っ込むだけで殴殺だ。防衛準備ができている術師相手なら、それをねじりきって殴殺だ。鎧甲冑一式着こんでいても、同様にねじ切る。


 私という存在は凶器だ。勇者組の前衛として活躍したわけだが、道を一歩違えば、盗賊団の護衛役として大陸から指名手配されてもおかしくない。

 私の属性は暴力だ。

 問題解決の手段は話し合いよりも、実力行使で押し通してきた人生だ。


 でも、今は、それをしない。

 黒幕に近づけない。

 私の気持ちは晴れる。すっきりはする。でもそれだけ。一時的な快感に過ぎない。

 根本にはいたれない。今はやり過ごしても、いつか勇者らと同じような役割を担った誰かに命を狙われるかもしれない。


 どうして、私が、殺されないといけないのか。

 そこにいたる謎を、根本を、抜本を除去しないといけないのだ。


 抜本的問題が、ミャーさんによる個人的恩讐が理由、等ではないと思う。

 もっと、私が殺されるにいたる理由があるはずだ。

 2年間一緒に旅してきた仲間を、あっさり殺してしまうだけの理由。

 秘密が露呈したかもしれないと疑いが生まれただけで、宿屋を燃やしてまでもみ消してしまうような理由が。


 そこに至りたい。そこまでいかないと、私はもう納得できない。


 ミャーさんをぶち殺したい気持ちを押さえつけ、考える。

 求めているものがあった。

 状況を共有し、相談できる相手。話し相手。

 ありていにいえば、仲間だ。

 少しでも心の負担を分担してくれる相手がほしい。


 私のいまある事情を、1から全部説明するのは膨大な作業になる。

 すべて正直に話しても、理解されないかもしれない。理解してもらい、協力してくれても、もしまた私が死んでしまったら、それも全部なかったことになって最初からやり直しかもしれない。

 それは結果的に私の心の寿命を追い詰めるし、目減りさせる行為かもしれない。


 それは判っている。


 でもこんなことを何もかも全部1人で被ってしまうことも、心がもう、しんどい。すでに限界値はみえている。心が終わってベッドから起き上がれなくなったら、その瞬間、私は終わるのだ。

 だから負債を分散したい。

 要は、助けてほしい。心にゆとりが必要だ。


 かつて仲間と呼ぶべき相手だった、勇者組の姿を思い出す。

 誰が、ねらい目だろうか。誰なら、私に協力してくれるだろうか。

 私の時間間隔でいえば、ほんのついさきほど、私を裏切り、それでも裏切りきれなかった獣人の姿が思い出された。

 ウォークライさん。

 あの最後のとき、ウォークライさんの秘密を知った。

 無口な脳味噌まで筋肉系と勝手に思っていたが、人情もあるようだ。私を殺害することに一定の罪悪感も示してくれた。人の心があるのなら、罪悪感という心につけこむことが有効だろう。

 一族郎党殺されることを防ぐため、私の殺害計画に組した。納得できる理由だ。

 人の心のあり様が見えないミャーさんよりは、何倍もやりやすい。

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