永遠の時を生きるということ
三題噺のオリジナル短編小説です。
私の小説に目を止めていただきありがとうございます。
誤字脱字のご指摘、感想など頂けましたら幸いです。
純玲
うちの庭にはみかんの木が植えてある。
初夏に咲く白い花がとても可愛らしい。
私はそれを見て毎年夏が来たことに気が付く。
庭の景色だけが私に季節を教えてくれる。
屋敷に閉じ籠っている私にはそれくらいしか外の世界と接点が無い。
接点を持つつもりも無い。
永年の時を生きる私にとって出会いとは別れでもある。
どれだけ親しい友を作ろうにも直ぐに相手は死んでしまう。
直ぐに別れが訪れる。
そんなさみしい思いをするならば誰とも出会うことのないこの屋敷に閉じ籠ってしまう方がずっといい。
「一人はさみしいよ。」
もう何百年も前に
まだかろうじて人と交流を持っていた頃に
だんだん人との出会いと別れが苦しくなってきていた時に
出会った人がそう言っていた
でも、それは限られた時を生きるからこそ言える事だ。永年の時を生きる私からすればなれてしまった一人より何度も何度も断続的に訪れる別れというさみしさや苦しみの方がずっと辛いのだ。
人との交流をやめた今ですら昔の友を思い出しさみしくなるのだからこれ以上こんなものを増やしたくない。
そう思ってもう何百年もこの屋敷に引きこもっている。
きっともう外の世界の人々の記憶からは薄れていっているのだろう。
このまま薄れ続けて伝説となっていってしまえばいいと思う。
昔いたちょっと不思議な年をとらな少女として。
伝説の記憶の中の少女はみかんの花を髪にさし人々の中心で知恵を授けまるで女神のようだったと。
みかんの花言葉は「清純」「親愛」
少女の初めての友が
「君のための花だね。」
と言ってくれた花。
彼女は今日も昔の友を思いながら庭の花を眺め続ける。
fin.
お題:屋敷、みかん、伝説の記憶
あなたがもし永遠の時を得たらどうしますか?
彼女のように閉じ籠りますか、それともさみしさを克服して人々との交流を続けられますか?
出会いとはとても尊いものですがそれには別れが常に隣合わせ。
それでも私はこの小説を読んでくださったあなたに素敵な出会いがあることをお祈りしております。
読者様に幸が訪れますように。
純玲