第三幕二十一話
ランスの刀は冷たく光っていて、恐ろしさを感じる。また、ランスの眼には強い意志が込められているのが分かる。彼にも彼なりの何かがあるのだろう。
「ランス、悪いわね。私はレイチェルに用があるの。あんたなんかを相手にする暇はないわ。」
目をギラギラさせて、ミシェルは剣を抜き、ランスに向けて構える。お互い、魔法が使えない条件で剣だけで決着がつくだろう。
「分かった。お前一人なら問題ない。さっさと行け。」
「え……そう。」
ミシェルは戸惑いながらもここを通り抜けていく。
「というわけで、これ以上は通してやれないな。通りたければ、俺を倒してから行くことだな。」
さっきとは打って変わって、ランスは一人も通さない意志を見せる。
「分かりました。基本はティナとロージェンで攻めて、その他は後方支援に務めて機を狙って、攻めに入れ。」
「「「「はい。」」」」
ミカエルは一旦、温存してなるべく能力を見せない予定なのだろう。正直、ミカエルの『恩寵』はチートだ。使うタイミングが上手く行けば、必殺となる。
「敵に作戦をバラしてもいいのか?」
「ええ、作戦がバレても勝てると思うので。」
ラグロ班長は過去にないほどに勝気な姿勢を見せる。もしかしたら、こちらが本来の班長の性格なのかもしれない。
「言ってくれるな。」
「よそ見しない。」
ティナの短刀がランスの首元に触れるが、ランスは切られるよりも早く回転して、短刀を蹴り飛ばす。その隙をみて、マイトが爆発で吹き飛ばそうとするが、ジャンプで避けられてしまう。
「強い……。ラグロ班長、もう少し人数をかけたらとりに行けると思いますが、どうしますか?」
ラグロ班長は少し考えて結論を出す。
「行くぞ。」
ランスに攻撃する人数が三倍になったのを見て、ランスは溜息をつく。
「はあ、仕方ないな。」
ランスのその呟きと同時に地面の下から、膨大な魔力を感じた。けど……ラグロ班長がいるから、魔法は使えない筈だが……。
ゾクリ
何となく、嫌な予感がした。ティナを掴んで、氷を使って上に退避する。
バぁぁぁぁぁぁぁぁん
地面が爆発した音がする。氷が崩れて落ちていくと思ったが、ティナによって安全に地面に下ろしてもらった。
「ティナ……流石にこれはまずいんじゃね?」
「ん。」
俺は自分が魔法を使えるようになっていることが分かる。てことは……
「お、あの魔法を止めるヤツも死んだか。ていうか、この中に生き残っているやつなんて居ないか。」
ランスの周りから、膨大な魔力が溢れ出ている。
「我は生きておるのじゃ。」
ランスの後ろにピッタリとミカエルがついている。『フィルター』で時を止めて、逃げきたったのだろう。
「私も生きているわよ。」
『回復』の『恩寵』でボロボロになりながらも、マリエッタは瓦礫の中からでてきた。こいつ、不死身かよ。
「俺も生きてるぞ。」
俺らの近くから、マイトの声がした。
「俺とティナもいるぞ。」
「ん。」
これに続く言葉はないといことは、生き残ったのは五人。ローゼルイスやラグロ班長はもう居ないようだ。ラグロ班長の穴は一番大きい。確実にこっちが劣勢だ。
「こんなに生き残ってんのか……。お前ら、本当に人族なのか?」
ランスは疑いの目を向けてくる。事実、俺が魔法を使えたから生き残っている所もある。それにしても、マイトはなんで回避出来たのだろう?
「まあ、いいか。こんくらいなら勝てる。」
「貴様、何故ラグロ班長の『恩寵』をくぐり抜けて魔法を使えたのじゃ?」
ミカエルは俺が一番気になっていることを馬鹿正直に聞いてくれる。流石に、教えてくれないだろ。
「さっき、レイチェルの重力魔法を使った罠が効いただろ?」
いや、教えてくれるのかよ。
「あれで、魔法による物理攻撃は聞くことと、魔法を消すやつの効果範囲を見切った。あとは、効果範囲より外から最大出力で魔法を使い、地面に大きく影響を与えさせただけだ。だが、もうそんな小細工は要らないな。」
俺らは、これからが本番だと言うことを肌で感じ取った。




