第三幕二十話
私は起きてすぐ、ランスの元へと行く。
「ランス、侵入者多数。人族の方向から来てる。とりあえず、私の罠を使うね。」
「もう、ここまで来たのか!速いな……。」
こんな所まで、攻め入られるのはかなりの失態だ。寝込みを襲うなんて感心しない。今度からは門番にもう少し強いのを配置しておこう。
ひゅーーーグシャッ
私の罠が発動した音がする。音的にかなりの人数を持っていけただろう。
「エド、現状は?」
「敵の残りの数は約二十名。そして、その中に……ミシェル前騎士長の姿があります。魔法を無効化すると言われているラグロなど他は人族のようです。」
「おっけー。」
ミシェルが来てるのか……。私は彼女に酷いことをした記憶があるから、出来ることなら謝りたい。ミシェルがここに居るということは、裏切った私を殺しに来たのだろうか?
「ミシェルが来てんのか……。」
これにはランスも驚きを隠せない様子だ。魔法無効化する奴とミシェルがペアで居るのは普通に危ない。それに、人族は『恩寵』と呼ばれるものを持っている。それだけで、こちらが不利だ。
「俺が行ってくる。」
「え……危ないよ。一人で行くのは良くない。」
「いや、三人くらいは通すかもしれないから、そっちの対応はお願いな。」
ランスは待ったを聞く様子はない。
「分かった。でも、危なかったら逃げてね。転移魔法を阻害している結界は外しておくからね。」
「分かった。エド、レイチェルの傍についておいてくれ。」
「かしこまりました。」
私は心の中でガンバレと呟く。その時には、ランスはとっくに飛び出していた。本部に居るのはもう、私とエドとジャスミンだけになった。
「よう、やっと、結界切ってくれたな。」
不意に空間から闇の渦が出てきて、声が聞こえてきた。まさか……この声は。
「シヴァ様……。」
「よう、レイチェル。久しぶりの感動の再開じゃないよ。」
私の身体は本能的に震える。
「レイチェル様になんて口をきくのですか、この無礼者。」
「あ?無礼者はどっちだよ。」
シヴァの拳がジャスミンに当たる前に転移魔法で隣に移す。
「おいおい、レイチェル。これは一体どういうことだ?まさか、俺様に逆らおうなんて訳じゃねえよな?」
シヴァ様から、すごい覇気が出ている。私は震えながらも、無謀ながらも少しだけ立ち向かう。
「この子達には、手を出さないでください。」
「人に物を頼める立場だと思うなよ。自分が何をしてきたか分かってんのか?おい、分かってんのかって!」
「はい……。」
私がしてきたこと……エルフの殲滅の指令を無視して、エルフの無血降伏にしようとしたこと。私はそのことを間違っているなんて、思っていない。そう強く信じて更に立ち向かう。
「なんで、殲滅しないといけないのですか?一旦、手下にしたっていいじゃないですか。その方が、どちらにとってもいいでしょうに。」
「ダメだ。手下にしたら、裏切られるからな。お前みたいな奴がいるから、手下はそこまで作れないんだよ。」
「クッ……。」
この現状を変えられなさそうな自分に腹が立つ。シヴァ様は誰も信じず、エルフを殲滅しに来たのだろう。私を殺し、ランスを殺し、ジャスミンを殺し、エドを殺し、そしてミシェルを殺すつもりなのだ。
「なんだよ、なんか不満でもあんのか?自分がそんなこと言えない立場ってことは分かってんだろ。なあ、そうだよな?これ以上、俺を失望させないでくれよ。」
「ね……。」
「あ、なんっつった?」
私は明確に反抗する意志を示す。シヴァ様や魔族を裏切らってでも私はエルフを助けたいし、エルフと一緒に居たい。
「死ねって言ったんだよ、神様クソ野郎。」
私は力を振り絞って、叫んだ。
「あっそ。」
シヴァはどこかつまらなそうに返事をする。
「はあ。」
大きな溜息をついて、後ろを向いている。そんな隙だらけな格好でも隙はないのだということはよく知っている。シヴァの周りの魔力がどんどんシヴァの手に集まっていく。その人差し指に溜まった魔力を飛ばして、私の頬を掠める。
「だから、言っただろ。手下なんて、意味のわからん奴は大嫌いなんだよ。最後の選択をくれてやるよ。死ぬか奴隷になるか?」
「どっちもお断りします。」
これが、私の史上最強の敵、神との勝負の始まりだった。




