第三幕十六話
今日は、上位クラスに移動する初日だ。空気もジメジメしており、憂鬱な気分だ。
「これから、レイチェルさんは上位クラスになります。みんな、仲良くしてあげてね。」
「「「「はい!」」」」
下位クラスと違って、先生の言ったことにちゃんとした返事をしている。教室を見渡すとミシェルがいた。私と目が合って、軽く頭を下げる。
「じゃあ、今日は剣の演習を行います。みんな、闘技場に移動してください。」
この学園にはちゃんとした闘技場は一つしかなくて、下位クラスでは使ったことは一度もなかった。
「レイチェル、久しぶり。急に上位クラスに上がってくるなんてどうしたの?」
「なんか、色々あってねえ……。」
正直、説明するのは面倒くさいし、したい内容でもない。
「でも、良かったじゃない。上位クラスに上がれたんだから、もう少し喜びなさいよ。」
「あはは……確かにそうだね。」
私は上位クラスに上がること、望んでないんだけどな……。
闘技場に入ると、各自ペアを組まされて、打ち合いを始めるように言われた。当然、私のペアは……。
「私、この訓練でペアがいるの初めてだから、嬉しいのよね。これからは、毎回ペア、よろしくね。」
「うん。」
ミシェルは首席で恐れられているから、誰もペアが居ないのだろうか?それとも、友達がいないからか?
「じゃあ、行くよ。」
ミシェルは凄いスピードで間を詰める。この子は……強い!
「ボケっとしない。どんどん、スピード上げてくよ。」
私はその合図でミシェルにどんどん合わせていく。少しづつ、使う魔力の量を増やしていきおいてかれないように力を上げる。
「中々、強いのね。なら、少し本気でやるわよ。」
ミシェルのスピードは格段と早くなり、技が増える。私は魔力を最大まで使い、ミシェルのスピードについて行く。私の最大の魔力でもスピードは劣っており、少し焦りを覚える。
「やめ。」
先生の大きな声が闘技場に広がる。
「レイチェルとの戦いは楽しかったわね。」
「でも、ミシェルは本気を出してないでしょ?」
「そうよ。でも、楽しかった。」
私はかなりのショックをうける。私の魔力を持ってしてでも、たかがエルフにすら勝てないという事実を目の当たりにしたのだ。
「ほら、面白いだろ?」
「ジャーティー学園長……。」
「あんたが思っている程、生徒は弱くない。思う存分、あなたの才能を爆発させなさい。じゃあ、また。」
ジャーティー学園長はそれだけ言い残して、転移した。クソババアめ……。
「え、ミシェルってジャーティー学園長と知り合いだったの?」
「うん、つい一日前に初めて喋った。」
「そういう縁は大切にしなよ。貴方の才能を認められているみたいだしね。」
「そうだね。まあ、魔法は使えないけどね。」
「え、そんなんで上位クラスに入れたの?」
そう、上位クラスのエルフがツッコんでくる。
「そうだけど、何か悪い?」
ちょっと、攻撃的な口調になってしまった。
「悪いだろ。そんなやつと俺らを一緒にするとかおかしいだろ。」
「ちょっと、あなたねえ。」
ミシェルが噛みつこうとするのを私は手で止める。
「てめえも、俺より弱いんだから、さっさとやめろ。俺も、こんな惨めな奴と一緒にされたくねえよ。」
これが、私とランスの出会いだった。
「てめ、舐めてんのか?」
ランスはそいつのことを蹴り上げて、一瞬でノックアウトさせた。
「あの……ありがとう。」
私は思ってもいないが、お礼を言う。
「どうも、俺とも仲良くしてよな。」
こうして、私たち三人は仲良くなるきっかけを得た。この後、どんな過程を経てどんな未来へと進むとも知らずに。
「……チェル、れ……チェル、レイチェル」
「あ、ランス。」
「どうした、急に寝だしたけど、大丈夫か?」
久々に、あの頃を思い出していた。
「うん、大丈夫だ。ちょっと、昔を思い出してただけだよ。」
「ああ、ミシェルのことを話してたからな。」
ホント、あの頃に戻りたいな。
「もう少し、休んどいたら。」
「うん、そうするね。」
最近は働き過ぎて疲れてるようだ。そしてまた眠って、また昔を思い出していた、近く来るであろう決戦に備えながら。




