第三幕十五話
荒れ果てた野営地は段々と静まり返ってきて、エルフも居なくなったと思われる。ただ火だけが黙々と燃え盛っていた。
「ティナ、ロージェン。ちょっといいかな?」
どうしてかは知らないが、ラグロ班長が直接呼び出しに来た。
「はい。」
「ん。」
「じゃあ、こっちの仮本部にね。」
正直、俺とティナが呼び出される理由は分からない。ティナの視力でも一応確認したから、魔法のことはバレていないはずだ。
仮本部に入ると、ミカエルが寝転がっていた。
「単刀直入に言うと君たちには、今回の戦争の主力になってもらいたい。」
「「「え?」」」
「今回の敵の策略によって、僕たちは二百人の仲間を失った。そして、人材不足が目立つから君たちを頼りたい。僕たち本軍の中で、戦闘時に君たち三人は自由に動いていいよ。その方がやりやすいと思う。」
ラグロの班長の周りだと魔法も使えないから、離れて動けれる分にはかなり嬉しい。
「なるほど……。分かりました、喜んでお引き受けします。」
「我も良いのじゃ。」
「私も。」
「じゃあ、そういうことだから、明日からよろしくね。」
「はい。」
俺ら三人は、一緒に仮本部を出ていく。
「俺ら大出世だな。」
「そうじゃな。我はいつでも負ける気はしないのじゃ。」
「ん。」
俺も魔法を自由に使えたら、こんだけ自身を持てるんだけどな……。
「それにしても、ティナは凄い強いのじゃな。」
「ん。本気出せばこんなもん。」
ティナは一人で殆どの暗殺者を倒した話は広まっているのだろう。
「そういや、ロージェン。『フィルター』の練習はどうするのじゃ?」
最近、毎晩のように『フィルター』の練習をしていた。おかげでかなり、使えるようになってきてはいるが、まだ合格を貰えていない。
「んじゃ、一発だけお願い。」
最初の頃の何倍ものスピードで石が飛んでくる。俺はミカエルに言われたことを思い出しながら、『フィルター』に集中する。
「おお、上達したのじゃな。」
俺は全ての石を凍らせることに成功した。
「それにしても、ローゼルイスが『フィルター』を習得したら恐ろしいな。」
「あー、たしかに。」
「ん、ローゼルイスがどうしたのじゃ?」
「あいつの『恩寵』なんだけどさ、『破壊』らしいから、めちゃくちゃ恐ろしいなと思って。」
そういや、ローゼルイスは恩寵を隠していたから、ミカエルはローゼルイスの『恩寵』を知らなかったのだろう。
「それもそうじゃな。じゃあ、また明日じゃ。」
「おう、また明日ね。」
「ん。」
俺らはもう、そんなに要らなくなった見張り無しにして、それぞれの寝る場所へと戻って行った。
自然と目が覚めて、明るい光を感じて次の日の朝が来たことを理解した。
「おはよ。」
隣から、ティナの声が聞こえる。そういえば、昨日は一緒に寝ていたことを忘れていた。
「今日もよろしくな。」
「ん。」
俺たちとミカエルは恐らく、前線でバリバリに戦うのだろう。昇進の可能性は高いが、死ぬ危険も高くなる。
「みんな、そろそろ出発するよ。」
ラグロ班長の合図によって、皆が隊列を作る。こうして、エルフ戦争の二日目が始まった。
俺らはスピードを出しながら、エルフの陣地をかける。中々、敵には遭遇せずスルスルと進んでいく。
バァン
そんな音が左側から聞こえてきた。
「敵発見、迅速に対処する。本軍は敵がいると思われる場所に攻撃を。」
ラグロ班長の号令と共に皆が敵の場所へと走る。
「「「「発火……」」」」
敵を追いかけると、四方から魔法が飛んでくる。なんとか、全員避けて反撃にかかろうとする。
「「「「「「「「発火」」」」」」」」
更に四方を囲まれて、魔法を放たれるがラグロ班長の『異能』によって全て消された。
「な……。」
エルフ達は全員、一斉に退散した。
「敵は退却。みんな、進んでくよ。」
ラグロ班長の後ろに皆がついて行くと、両手を上げているエルフが道の真ん中に立っていた。
「なんの真似ですか?」
ラグロ班長の言葉にこのエルフの女は答える。
「同盟を結ぼう、人族の騎士。」
「エルフの代表ですか?」
「いや、私たちはレジスタンス。」
レジスタンス……?意味の分からない集団が俺らに同盟を求めてきたが、俺らに利益はあるのだろうか?
「あなたは、何者ですか?」
「私は……前騎士長のミシェルだ。」
前騎士長……?
この出会いが戦争を加速させることを俺たちは、まだ知らなかった。




