第三幕七話
「正解じゃ。貴殿の予想通り、我は時を止める『恩寵』と『フィルター』の組み合わせで戦っているのじゃ。」
まさか、本当に時を止めているとは……。それに『フィルター』とは何だ?なんか、ネージュがいつか言っていたような……。
「なあミカエル、『フィルター』とは何だ?」
「貴殿が知らないとは驚きじゃ。『フィルター』は『恩寵』と人間の本能の組み合わせによる防御じゃ。敵がある一定の範囲内に近づいたら、本能が『恩寵』を発動して攻撃を防ぐのじゃ。」
てことは……
「お前、最強じゃん!」
ミカエルに攻撃をしようとしたら、強制的に止められて躱される。それだと、ミカエルに攻撃を当てるのは不可能となる。
「そんなことはないのじゃ。『フィルター』にもラグがあるから、限りなく速い攻撃がきたら避けきれない。」
「なるほどな……。」
『フィルター』は別に最強ではないという訳だ。
「ミカエル、俺に『フィルター』を教えてくれ。」
「良いが、一つ条件があるのじゃ。『フィルター』は慣れるまでは使はないのじゃ。『フィルター』は味方に発動したら、最悪のケースまで考えられる。」
あ……いつかの剣術大会でネージュは『フィルター』を使っていたのか……。そしてまだ『フィルター』をマスターしてなかったから、意図せず俺の腕を粉々にしたし、攻撃を防げたのだ。
「分かった。その約束は絶対に守るよ。身をもってその危険さは知っているからな。」
「そうか、なら良いのじゃ。まず、『フィルター』を使う時は全身に魔力を常に循環させるのじゃ。」
俺はミカエルに言われた通りに膨大な魔力を循環させる。
「そして、自分の『恩寵』を発動するイメージを魔力にのせるのじゃ。あとは、集中するだけじゃ。」
身体中が少しひんやりとする。ついつい魔法に頼って、怠けてしまっていた『恩寵』の便利さに気づいた。ミカエルに四方から石を投げられる。
ピシッ
殆どの石は凍ったが、何個かは凍え損ねた。
「初めてにしては、いい感じじゃ。ひたすら、実践を繰り返せばいつかはできるようになるのじゃ。」
それから暫く、俺はミカエルに石を投げられ続けた。
日が変わった頃、俺はついにある程度は『フィルター』を使えるようになっていた。
「貴殿に魔力切れという概念はないのじゃ?それだけ魔力があったから、夜通し練習が出来たのじゃぞ。まだ、完璧じゃやいから『フィルター』は使わないようにするのじゃ。我は眠いから、今日の訓練をサボるのじゃ。連絡はよろしくじゃ。」
「おっけー、ありがとなミカエル。」
俺は富士山級の睡魔を抱えて訓練に参加する。
「ロー、眠そう……。」
「てめえ、眠そうな面してんな。」
ティナやマイトに指摘されるほど、眠そうな顔をしていたらしい。訓練にも眠くて中々身が入らない。
「君たちに連絡がある。」
ラグロ班長が初めて来たので、少し目が覚める。
「例年なら、異例だが君たちには次の戦争に参加して欲しい。」
「「「「え?」」」」
更にもう少し、眠気が覚めた気がした。
「君たちは想像以上に優秀だ。これを戦力として使わない手はないと考えている。だから、これからはそのつもりで訓練を受けるように。」
「「「了解致しました。」」」
あれ、眠気を感じられないような。
「あと、ロージェン……だっけ?君は訓練中に寝ているみたいだから、サボっているミカエルと一緒に罰があるからね。今後は寝ないようにね。」
え……眠気がなくなっていったと思ったら、ただ寝てたから眠くなくなっただけだったのだ。それにしても、ミカエルはサボりがバレちゃったか……。
俺たちはラグロ班長から罰を受けるために、ラグロ班長の所へと向かった。そこには、既に何故かティナがいた。
「よし、揃ったね。今回は一つ指令があったから、こっそり呼んだだけだよ。」
なんだ……処罰かと思った。
「君たちは、他の新人と違って本陣に参加して欲しい。腕はそこら辺のベテランよりも強いみたいだから、このようなお願いをしている。もちろん、本陣の方が危険だ。嫌なら、辞退しても構わない。」
「いいですよ。」
おれは本陣の方が嬉しかったから、直ぐに返事した。
「じゃ、私も。」
「我も良いのじゃ。」
ミカエルとティナも大丈夫みたいだ。それにしても、こいつらは口の利き方を学んだ方がいいんじゃないか?ラグロ班長みたいな人格者じゃないと怒るぞ。
「いい返事が聞けて良かったよ。じゃあ、これからの訓練は僕らのところに来てね。連携とかの確認をするからね。」
「了解です。」
「ん。」
「了解じゃ。」
ついに戦争に参戦できる。戦地の端っこでやっているままごととは違う。人族の命運を握る一人になれる。俺はその事を心の中でヘスティアとルードに報告した。




